子どもから学ぶ謙虚さをもつ

子どもの可能性

行動の礎となっているものを見直す

僕らは自分たちが暮らしてきた世界で体験したことを礎にして、行動しています。

それは「学校現場の仕事」でも「子育て」でも、同じように感じます。

自分がされてきたことが、基礎となっています。

 

小中高とサッカー部員だった僕は、子どものときに出会った顧問の先生のやり方に、ずいぶん影響を受けていました。

 

選手がミスをしたら、ひどく叱っていました。

怒鳴り散らしていました。 

他のチームの先生たちも叱っているので、そういうものだと思っていました。

 

ところがです。

ミスをする子を叱ると、その子はまたミスを重ねます。

叱ってミスがなくなるということはありませんでした。

 

さらに、僕が叱るので、周囲の選手もミスをした子を責めます。

萎縮してどんどんミスを重ねていくのです。

また、他の選手もミスをしないように、消極的なプレーを選択するようになります。

 

僕は、自分が子どもだったころを思い出しました。

「ミスをして叱られると、僕も同じだったな…」

 

ふと立ち止まって自分の行いを省みる。

それからというもの、ミスを叱ることはやめました。

ミスを重ねない言葉がけを心がけました。

 

おもしろいものですね。

大切なことは、いつだって子どもたちが教えてくれるのです。

 

 

結果よりも大切にしたいこと

はじめのうちは、勝つことにこだわっていました。

たとえ凡戦であっても勝てば満足していました。

どれだけ良い形をつくっても、負ければ叱っていました。

 

ところが、そういう指導をしているうちは、なかなか勝てませんでした。

負けてばかり。

弱いチームと練習試合を組んだときしか勝てません。

そんなことで褒めたり叱ったりすることがバカバカしく思いはじめました。

 

あるときから、勝ち負けにこだわるのをやめました。

一つの練習に、一つの試合に課題を設定しました。

 

「今日はボールポゼッション100%を目指そう」

「ハーフラインから越えさせないようにディフェンスしよう」

「3本に1本、ダイレクトパスを入れよう」

「クリア禁止」

「ヒールキック多用」

「スルー多用」

 

それで、その課題をクリアするためにどうしたらいいかを子どもたちに考えさせました。

 

勝ち負けにこだわるのではなく、課題をクリアすることにこだわらせました。

ハーフタイムにも、子どもたちは自分たちで話し合いました。

 

試合後には、課題に取り組んだ気づきを話し合わせました。

すると、チームは県大会に勝ち上がったのでした。

 

皮肉なもので、叱ったり怒鳴ったり、声を枯らして指導していたころには勝てなかったチームが、指導をやめたら強くなったのです。

気づきました。

 

「このチームに僕はいらない…」 

 

僕があれこれ言うことは、子どもたちの可能性にフタをするような行為だったのです。

 

ただ見守るという大人の在り方が子どもを伸ばす

子どもの力を信じて手放せば、子どもたちはどんどん力を伸ばしていくことを体感しました。

 

先日、生徒の部活動の試合の応援に行ったときのこと。

観覧席から怒鳴る大人の実に多いこと。

 

「何やってるんだ!」

「◯◯、ちゃんとディフェンスしろ!」

 

中には審判のジャッジに大声で文句を言う人も。

 保護者でしょうか、先生でしょうか。

子どもたちの瞳に、そんな大人の姿はどのように映っているのでしょうか。

 

子どもたちは、大人の言うことは聞きません。

けれど、その姿をよ〜く見ているのですね。

そのことを心に留めておきたいと思います。

 

自分の在り方が子どもたちの可能性にフタをしていないか。

常々問い続けていかねばなりませんね。

 

ハッピーな子どもを育てる大人になるためのしつもん

子どもの可能性にフタをしないために、手放すものは何ですか?

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。