うちの妻、知りませんか?


ウチの妻はよくいなくなる。

っていうか、ほとんど家にいない。

 

疲れて帰ってくる。

ぼんやりしている。

 

 

1時間後も、そこでぼんやりしている。

仕方なく僕が洗い物を始めると、思い出したように動き出す。

 

 

「お茶、淹れようか?」

なんて声を、たまに優しくかけてくる。

 

 

「じゃあ、お願い」

と僕も返す。

 

 

すると、急須にお茶っ葉が入った状態で放置されること30分。

僕は仕方なく自分でお湯を注ぐ。

 

 

「じゃあ、行ってきます」

そう言って出かける妻。

リビングのカゴの中に洗い立ての洗濯物。

僕は黙って洗濯物を干す。

 

 

「なんか仕事しなきゃな」

「どうやったら稼げるんだろ?」

と、よく尋ねてくる。

 

最初のうちは、僕も一生懸命答えていた。

 

 

「こんなことができるんじゃない?」

「あんなことができるんじゃない?」

 

 

そのたびに「あーでもない、こーでもない」と言い訳をする。

それで、僕は「働く気なんてないんでしょ?」って尋ねる。

 

 

「そうなんだよね」と返事をする。

それがウチの妻である。

 

 

「働きたくない。でも、好きなことはしていたい」

そうやって彼女は言う。

「それ、ニートが言う言葉だからね」

と僕は返す。

 

 

「会いたい人に会い、行きたい場所に行く」

がモットーの妻は、よく家を空ける。

いや、もう、驚くほど空ける。

 

 

さすがに自粛期間中は少しだけ(?)自粛していたけれど。

もう、ここ最近はほとんど家にいない。

彼女だけでも緊急事態宣言を出しておいてくれないかと政府には強く要求したい。

 

 

先週も金曜日から月曜日まで東京に旅立っていた。

そして、今度は土曜日から…、いつ帰ってくるのかわからない。

平日だって、ほとんど家にいなかったしね。

 

 

もちろん、ビジネスをしているママ起業家の中には、日本全国を飛び回っている人もいるだろう。

だが、間違えないでほしい。

彼女はただ、遊びに行っているだけである。

 

 

たぶん、3児の母親で、主婦業を全うするでもなく、働くわけでもなく、ただ「会いたい人に会い、行きたい場所に行く人」はそうそういないのではないか。

決して彼女は儲かっている会社の社長夫人ではない。

僕が必死に昼夜を惜しまず働いて稼いだお金を、昼夜を惜しまず遣っている人に過ぎない。

 

 

「せめて遊びに行くお金ぐらい働いたら?」と言うのだけど、どうやらその気はないらしい。

自分で起業しなくたって、パートだっていいのである。

お金を稼ぐ手段はいくらでもあるはずだ。

 

 

だが、しかし、である。

だが、しかし、である。

 

 

 

とにかく働きたくないし、遊んでいたいのだ。

世のニートたちの憧れのような生き方である。

 

 

 

この話をすると、「多くの方から、よく離婚しないよね」と言われる。

うん、自分でも不思議だ。

 

 

 

「でも、私がご縁をつないできてるんだからね」

と彼女は勝ち誇ったように言う。

「ご縁をつなぐことが仕事」と言って憚らない。

 

 

ちょっと…、いや、かなり勘違いをしている。

 

 

「ご縁をつないでくる」が仕事として成立するように、僕はオンラインサロンを作っているだけである。

トークライブを企画し、集客しているだけである。

 

 

 

僕がそうやってマネタイズする方法を生み出さなければ、「遊んできて友達作ってきただけの人」でしかない。

 

 

そんなわけで、僕は彼女を「疑似餌(ルアー)」と呼んでいる。

大海原に回遊させて、釣れてきた魚をどう料理するかを必死になって考える。

 

 

 

「私はすごい!」って言うけれど、たぶんそれを成立するように考えている俺の方がすごい。

 

 

そもそも、僕が在宅で仕事をし、しかもおそらく普通の旦那さんよりも料理や家事ができるという、ハイスペックなお父さんだから成り立っているだけである。

 

 

よく移動距離は収入に比例する、と言われる。

だから、本来は僕が移動した方が収入は多くなると思われる。

彼女の場合、収入を生み出さないため、どれだけ移動距離が伸びても、掛け算するとゼロである。

 

 

ただ、我が家は妻がいないと、とても静かである。

みんな、自分のやりたいことをやっている。

僕が子どもたちに何かを要求することはない。

 

 

自分のペースで料理をし、洗濯をし、洗い物をする。

あと冷蔵庫の中とかがどんどん綺麗になる(捨てまくる)。

ちなみに、彼女がいるときに捨てると、文句を言われるので気が滅入る。

 

 

そんなわけで、今日も妻がいない。

 

 

僕はよく彼女に「なんでそれが許されるのかわからない」と言う。

言ってることとか、やってることとか、社会通念上けっこうムチャクチャだよな…と思う。

 

 

もし可能なら、一度奥さんを交換してみたい。

世の旦那様に、あれは普通なのか、確認していただきたい。

 

 

残念ながら、僕は他の女性と結婚したことがないため、一般的な結婚生活がどういうものか、想像できない。

世の旦那様は、こんなにも家庭で動くものなのだろうか。

動かないと成立しないものなのだろうか。

 

 

そう。

1週間ぐらい、他の奥さんと結婚生活を送ってみたい。

離婚したい、とかそういう意味ではない。

これは普通のことなのか?ということを確認したい。

 

 

…というわけで、今日からまた父子家庭。

別にもう、特別なことではない。

子どもたちも誰一人気にしていない。

 

 

お母さんがいない状態が日常になっている。

こういう家庭って珍しいと思う。

 

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。