お母さんを幸せにするために生まれてきた


「子どもはお母さんを幸せにするために生まれてくる」

 

 

そんな言葉をよく耳にします。

僕は神様の存在など信じておりませんから、胎内記憶ですとか、そういった類いのものとは一定の距離を置いておきたい人間です。

ですから、その真偽はわかりません。

 

 

でも、そういうことってあるのかもしれないなと思うのです。

 

 

 

まだ僕が学校の先生だった頃の話です。

 

 

ある年、一人の男の子が母親の内縁の夫から暴力を振るわれるという事件がありました。

毎日、身体に痣をつくって学校にやってくる。

保護者に電話をかけても一向に連絡がつかない。

僕らもギリギリの選択を迫られました。

 

 

虐待を発見したら即通報する。

そんな流れもができあがるのはもう少しあとのお話。

親子を引き離すという行為は、胃の痛くなる決断なのです。

 

 

 

当時の状況を申し上げれば、児童相談所預かりとなると、転校せねばなりませんでした。

人間関係づくりが得意ではない彼は、できればこの学校で卒業したいと言います。

僕ら教師たちも、それが最適解のように考えていました。

 

 

 

しかし、事は急を要する。

本当に胃の痛い思いをいたしました。

 

 

 

 

当時の制度によれば、中学校三年生になれば、申請することで転校せずに済みました。

なんとか三年生になるまで。

 

 

 

そんな願いを抱きつつ、「限界になる前に言うんだぞ」と伝えました。

それが僕らの精一杯でした。

 

 

 

なんとか中学三年生になると、彼に対する暴力はますます激しくなりました。

もう限界だと感じた僕は、彼に「どうしたい?」と尋ねました。

そのとき、この子が言った言葉が僕は忘れられません。

 

 

 

「母ちゃんさ、男がいないと生きていけないんだ」

 

次に呟いた言葉に、僕は耳を失いました。

 

 

「今の父ちゃんはさ、暴力振るうけど、お金持ってて、母ちゃん幸せそうなんだ。たぶん、俺がいない方が母ちゃんは幸せになれるから。俺、児童相談所に行くわ」

 

 

こんな状態になってまで、母を思う子ども心。

僕はぎゅっと胸を締め付けられるとともに、母親とその内縁の夫に対する怒りを覚えずにはいれらませんでした。

 

 

 

「親思う心に優る親心」とは言うけれど。母を想う子の心もまた慈悲深い。

だから、僕はいつもお母さんたちに伝えるのです。

 

 

 

「子どもはお母さんを幸せにするために生まれてくる」

 

 

そういうことってあるのかもしれない。

ならばまず、あなたが幸せになってください、と。

 

 

 

あなたが幸せに生きてくれなければ、子どもたちは自分自身の幸せのために生きられないのです。

 

 

 

そして、お父さんにはこう伝えるのです。

 

 

あなたがもしも子どもたちの幸せを願うならば、あなたが第一にすべきことは妻を幸せにすることですよ、と。

男子たる者、女性の一人も幸せにできなくて、何が男でしょうか。

 

 

くればやし ひろあき

公立中学校で16年間3000人以上の子どもたちと出会ってきた思春期の子どもの専門家としてメルマガ配信。当初、学校の先生に向けて発信したが、先生たちには見向きもされず。なぜかお母さんたちの心を掴んでしまい、北は北海道から南は沖縄まで全国各地に呼ばれるようになる。個人セッションをスタートすると、お母さんたちで行列ができる。
気がつけば、幼保小のPTAや高校生、なぜかシルバー人材センターまで、いろんなところに呼ばれる講演家に。
「お母さんとお母さんをつなぐ」をコンセプトに『子育て万博』を主催。妻とともにお母さんコミュニティー『プレシャス』を主宰し、名古屋にてお母さんのための寺子屋『ラブリー』を開校。
また、STRインストラクターとして年間350名が入門講座を受講。その上位講座である門下生養成プログラムは全国16都道府県から参加し、3日で満員御礼となる。
365日、子育てからパートナーシップまで、人妻たちの悩みに寄り添う生活を続けている。
妻と3人の子どもの5人家族。1978年生まれ。出身地名古屋。