この世界は「女性」で成り立っている!


いわゆる「古典」の授業の中で、思春期の中学生たちに「ウケ」がよかったのが、「通い婚」の話をするときでした。

 

 

平安時代、貴族社会では「通い婚」という婚姻スタイルが取られました。

男性が女性の家に夜な夜な通う。

朝を迎えると男性は帰っていく。

ですから、一夫多妻制が成り立ちました。

 

 

女性は常に、愛しい人の来訪を待ち続ける。 

そんな話をすると、子どもたちは驚嘆の声をあげます。

 

 

「家族は一つ屋根の下で暮らすもの」という固定観念が僕らにはあります。

それが覆される。

女子生徒たちは口々に「そんなのありえない!」とつぶやくわけです。

 

 

夫婦を家族の中核となすのが核家族です。

一方、インドのナヤール人は、母との血縁関係で結ばれた兄弟姉妹で暮らしています。

 

 

姉妹は結婚しても兄弟のもとを離れません。

兄弟姉妹が一つ屋根の下で暮らすのです。

 

 

 

夫は夕食を終えると、自宅から妻のところへやってきます。

そうして、朝を迎えて帰っていくのです。

 

 

ですから、妻は複数の夫をもつことができます。

夫もまた、複数の妻をもっているのが普通でした。

 

 

したがって、生まれた子どもの「生物学的な父親」が特定できない場合が多くありました。

出産にかかる費用を払った者が「社会学的な父親」になったのだそうです。

 

 

アフリカでは、妻が夫の父系家族に加わらず、出身家族と共に暮らし続ける例が見つかりました。

アジアでは、兄弟が一人の妻を共有する一妻多夫婚の例が見つかりました。

夫婦や家族の形にも、いろいろあるわけですね。

 

 

さて、今日では一対の夫婦が日常生活における利害を共有し、食生活や教育の基本的単位となっています。

夫婦の間に生まれてきた子どもとともに、三者三様の結びつきをしています。

 

 

夫婦という関係。

そして、母子という関係です。

 

 

「生物学的な父親」の認知が欠如している社会もあるようです。

面白いもので、父親は妻と子どもから「この人がお父さんよ」と認定されて、初めて父親になれるわけですね。

 

 

世のお父さんへ。

あなたが「お父さん」なのは、妻と子どもたちが認知してくれたおかげですよ(笑)

 

 

長男が生まれた日。

出産には24時間以上を要し、妻は明け方出産を終えました。

 

 

当然、妻はヘトヘトですが、丸一日連れ添った僕もまたヘトヘトでした。

出産に立ち会った僕は、しばし生まれたばかりの赤ちゃんと至福の時間を過ごしました。

 

 

産後の処置をするため、部屋を出された僕は、病院の狭い廊下でぐったりとしていました。

 

 

しばらくして、看護師さんがやってきて言いました。

 

「お父さんはもうお帰りください」

「えっ?」

「奥様も疲れてらっしゃるし、赤ちゃんも会えませんので」

「はぁ…」

 

 

こうして、僕は一人っきりの家に帰ってきました。

朝5時30分。

 

 

男って無力だな…と思った瞬間でした。

男なんて、子どもを産むためにしたことなんて、精子を提供しただけです。

それも毎日無数に生み出される大量の精子の、わずか1匹です。

 

 

女性は毎月ひとつの卵子を生み出します。

そして、精子と結びつき受精卵となります。

それを十月十日かけて、何千倍に拡大させます。

 

 

女性は偉大なる存在です。

女性がいなければ、社会は成立しないのです。

一夫多妻などというと、女性を軽視しているように思えます。

しかし、少し見方を変えると、女性の存在はそれだけ重要であり、男性はそれほど生物的には必要がない…と考えることもできます。

 

 

 

「子どもを認知する」なんて話があります。

なんとも男性優位な考え方です。

「男性社会」が生み出した思考であると思います。

 

 

本来、父親は母と子に認知されて、初めて父親になれるわけですからね。

 

 

さて、多くの核家族は家庭の経済基盤を男性が担っていることが多いです。

共働き家庭も増えましたが、収入面で男性が優位である場合がほとんどです。

 

 

現代社会では、生きていくうえで「お金」は欠くことのできないものです。

「お金」に全能性を与えた僕らは、貨幣経済なしに生きていくことができなくなりました。

そして、お金がないことに対して極度に不安を覚えてしまいます。

 

 

お金に対して、いわば「畏敬の念」すら覚え、崇め奉っているのです。

「お金教」の信者と呼んでもいいでしょう。

 

 

男性からの物理的もしくは精神的な暴力に耐える女性もいらっしゃいます。

経済的に自立できないばかりに、それを耐えしのぐしかない。

そんな現実もあるわけです。

 

 

その点で、女性はお金に対するブロックのある方も多くいます。

男性の中には「俺が働いた金で遊びやがって」なんて言う馬鹿者がいるわけでしてね。

 

 

本当に馬鹿者であると思います。

男性が働けるのは、女性が家庭を整えてくれているからです。

決して「養っている」わけではありません。

 

 

家族として、それぞれの役割をこなしているに過ぎないのです。

それは、対等な関係性です。

 

 

アメリカの社会人類学者ジョージ・マードックは、家族の社会的機能として性、経済、生殖、教育の4つを定義しました。

核家族が「人類社会を支える機能」をすべて有しているため、「普遍的な社会単位」と位置づけました。

 

 

夫婦の関係性。

家族とは何か。

考えるきっかけになれば幸いです。

 

 

 

これまでの時代は「男性社会」でした。

これからの時代は「女性が輝く社会」がやってきます。

ということは、女性を輝かせる男性が求められる時代であるとも言えるわけです。

 

 

魔法の質問

 どんな家族が理想ですか?

 

【参考文献】
山極寿一 著
『家族進化論』
(東京大学出版会)

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。