なぜコロナウイルスはこんなに暗い気持ちにさせるのだろう?


1995年、阪神淡路大震災。

死者と行方不明者は6437人。

負傷者は43792人。

全壊した家屋104906棟、半壊は144274棟。

 

 

そこかしこから火の手が上がる映像に僕らは「これは戦争か?」と思ったほどだ。

 

 

朝のニュースではそれほどの騒ぎではなかった。

まだ、テレビや新聞、ラジオが情報を得る唯一の手段だった時代の話だ。

 

 

学校帰り、駅で号外を受け取り、目を疑った。

それは遠く海を隔てた戦地の様子に見えた。

 

 

その年、神戸を本拠地に構えるオリックス・ブルーウエーブ(現在のオリックス・バファローズ)がリーグ優勝を果たした。

翌年には、日本シリーズを制している。

「がんばろうKOBE」を合言葉にチーム一丸となっての優勝だった。

 

 

海の向こうでは、同じく関西出身の野茂英雄が日本人初のメジャーリーグのオールスターゲームに出場している。

全仏オープンで伊達公子がベスト4に進出し、ウインブルドンでは松岡修造が日本人として62年ぶりにベスト8に進出している。

 

 

大相撲の九州場所では貴乃花と若乃花の兄弟による優勝決定戦が行われたのもこの年。

スポーツは、日本を元気にする存在だった。

 

 

2011年3月11日、東日本大震災。

波の高さは10m以上、最大遡上高(陸へ上がった津波の標高)40mという想像を優に超えた津波の映像に僕らは震えた。

 

 

担任をしている生徒の兄が東北におり、連絡がつかないとのことで、僕らは胸を痛めた。(2日後に連絡がついて無事が確認された)

死者は1万5889人、重軽傷者は6157人、警察に届出があった行方不明者は2529人とされている。

 

 

自然はコントロールすることができない。

だが、それだけではない。

その後起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故は、人間が生み出したものすら人間はコントロールできないことを如実に表していた。

 

 

Jリーグの公式戦は中止になり、A代表の試合は急遽チャリティーマッッチに切り替わった。

FIFA女子ワールドカップのドイツ大会では日本代表がアジア勢として初の優勝を成し遂げ、日本中を歓喜させたのだった。

 

 

スポーツだけではない。

音楽もまた、この国を勇気付ける存在である。

 

 

多くのアーティストがチャリティーコンサートを主催。

歌番組もまた日本を元気にさせた。

 

 

NHKが行っている震災支援プロジェクト「NHK東日本大震災プロジェクト」のテーマソングとして東北出身の映画監督岩井俊二が作詞、作曲家の菅野よう子が作曲した『花は咲く』。

このプロジェクトには多くの著名人が参加した。

 

 

2016年の熊本地震では嵐が歌う『ふるさと』をBGMに嵐の5人が応援メッセージを届けたことは記憶に新しいところだ。

 

 

音楽やスポーツは僕らは勇気づけ、励まし続けた存在だと思う。

震災大国ニッポンには、幾度となく未曾有の危機がやってきている。

 

 

震災だけではない。

毎年のように台風が直撃し、豪雨による被害をもたらしている。

地下鉄サリン事件など、社会を震撼させる事件も起こっている。

 

 

そうやって社会に暗い雰囲気になるたび、音楽に勇気づけられ、戦うアスリートの姿に元気をもらってきた。

ところが今、何もかもが自粛ムードだ。

 

 

なんといっても空気が悪い。

何をやっても不謹慎。

自粛しないのは不心得者。

そんな空気が漂っている。

 

 

先の震災のとき、社会は「こんなときだからこそがんばろう!」と奮い立ってきた。

ところがどうだ。

この一ヶ月、「こんなときだから大人しくしていよう」だ。

いや、「こんなときだから我慢しよう」という空気で汚染されている。

 

 

そして、「俺たちも我慢しているんだから、お前も我慢しろよ」という圧力が日に日に強まっている。

この鬱屈した思いが今、暴発しかけているように感じる。

 

4

愛知県蒲郡市では57歳の男性が新型コロナウイルス感染を知りながら、複数の飲食店を利用したという。

自宅待機を求められながら、である。

「菌をばらまく」などと話していたそうで、飲食店を休業に追い込んでしまった。

 

 

山梨県の60代の男性は、例の大阪のライブハウスに行き、その後発熱。

その状態を隠してコンビニでバイトをしていたそうである。

 

 

横浜では70代の男性がエジプト旅行後発熱。

発熱後も市内のスポーツジムを利用し、陽性反応が出たという。

スポーツジムはクラスター感染を引き起こしやすいようである。

 

 

高齢な方ほど重篤な状態になりやすいのがコロナウイルスのようである。

これ以上の感染拡大をさせないために、学校は休校措置を取り、子供たちから貴重な時間を奪っている。

 

 

それは何のためだろうか。

比較的重篤な状態になりにくい若者たちの活動を抑制することでさらなる拡散をさせないためである。

 

 

ところがどうも高齢者の方が拡散をさせているように見えるのは気のせいだろうか?

 

 

もちろん、体調が悪くなった人から検査をする仕組み上、高齢者に感染者が出やすいのではあるが。

こういう浅はかな行動は自粛ムードにすら水を差す。

 

 

イベント自粛が相次ぐ中、椎名林檎さんが率いる『東京事変』がライブを決行し叩かれている。

堀江貴文さんが主催する『ホリエモン祭り』も開催に向けて動いているけれど、大いに叩かれている。

 

 

みんなが「自粛しろ!」と叫ぶ。

自粛しない者を叩く。

これについては、賛否両論ある。

自粛すべきなのか、そうでないのか。

正解はどこにもないように思う。

 

 

我慢が我慢を呼び、自粛が自粛を呼ぶ中、自粛している人たちが「えっ?何なの?」と思わせてしまう浅はかな行動を、年齢を重ねた大人の中の大人がしてしまうのは恥ずかしいことではないだろうか。

 

5

終わりが見えない中での、自粛ムード。

とりわけ、これまで日本を元気にしてきたスポーツや音楽活動の自粛は大きい。

 

 

日本を元気にする。

そんな取り組みが必要だと思う。

 

 

支援、支援、支援。

バラマキ、バラマキ、バラマキ。

 

 

それももちろん必要だけど。

「元気がない」が一番マズいのではないか。

僕は今、そんなことを考えている。

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。