情報に右往左往する僕らが、組織づくりで大切にしたいこと


今、リーダーシップとマネジメントの本を書いている。

原稿は11万字を10日で書き上げたのだけど、出版社に送る前にどうしても書き足したくなって、1本だけトピックを書き加えた。

そのテーマは「情報統制と情報共有」。

 

 

僕が書いているのは、自分で考え自分で行動できる人をいかにして育成するか、という本。

僕が経験してきたエピソードを題材に、組織づくりのヒントをリーダーの視点で書いている。

 

 

で、ふと昨今の社会情勢を鑑みて、やはり「情報」については書いておきたいと思って筆を取った次第。

僕らは今、大量の情報の中を生きている。

何が本当で、何が嘘かもわからない。

ある人の本当は、別の誰かの嘘で、その誰かの本当は、ある人にとっては嘘で。

 

 

そういう世界だから、僕ら一人ひとりがどんな情報に触れておくかは極めて重要な問題だ。

 

 

2月に開催した門下生講座の前、オミクロンさんが急に猛威を奮い出した。

受講者さんからも心配の声がたくさん届く。

それで、僕は何とはなしに「コロナ関連」のニュースを読むようになった。

 

 

すると、だんだん「コロナって怖いね」という感情が湧いてくる。

死者何人、重症者何人という数字だけが目に飛び込んでくる。

不思議なものだ。

実態がさっぱりわからないのに、情報が僕の感情を揺れ動かす。

 

 

ところが、講座も無事終了すると、そんなニュースをあえて見に行ったりはしなくなる。

すると、「怖い」という感情はどこかへ消え去ってしまう。

 

 

最近は専ら戦争が話題だ。

家族でもよく戦争の話をする。

戦争関連のニュースを目にするようになる。

 

 

すると、急に「戦争って怖いよね」とか、「ロシアって怖いよね」とか、「核兵器ってどうよ?」とか、「自衛隊で大丈夫?」とか、いろんな感情が湧いてくる。

 

 

そういえば、東日本大震災が起きたときは、防災意識が高まって、そのうち度が過ぎて店頭から飲料水とペットボトルが消えたっけ。

今、そんなに大量の備蓄品を蓄えている家庭は少ないように思う。

 

 

「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ということで、僕らは情報に煽られ恐怖から行動し、やがてそんなことも忘れてまた、のほほんと暮らし始める。

僕らはそうやって情報に翻弄される社会を生きている。

 

 

よく昨今のマスコミを見て、「政府の手先だ」的な話をする人がいる。

裏で結託しているとか…、なんだかよくわかんないけど。

僕はそうは思わない。

単純に「みんなが見る」から「情報を出す」だけだと思う。

 

 

テレビであれば視聴率であり、ネットであればPV数であり、新聞雑誌であれば発行部数であり。

とりわけテレビやネットは広告収入ビジネスなので、そこにユーザーが集まることが大切なわけで。

 

 

つまり、何が言いたいかと言うと、みんなが「恐怖を煽るもの」を見たがるから、そういう情報の世界が創られているのだと思う。

 

 

それでよく「悪いニュースばかりじゃなくて、良いニュースも流してほしいよね」なんて声をよく聞く。

Facebookを眺めてみると、他者の「こんなことがありました」「こんなところに行きました」「こんな人に会いました」「こんなものを食べました」という良いニュースが並んでいる。

 

 

それを見て、素直に「いいね」って思えるのは、かなり清らかな精神世界の持ち主で、「人の不幸は蜜の味」というように、実際は他者の不幸の方が美味しかったりもするわけだ。

 

 

実際、「SNSを見るのが辛い」なんて人は多い。

人と比べて、自分の日常が見すぼらしく見えてしまうのだそうだ。

まあ、Facebookなんて日常のハイライトをダイジェストで垂れ流しいるだけなのだから、そんなに気にすることないのにな、と思うのだけど。

 

 

ある社長さんに「社長、美味しい物ばかり食べてますね」って言ったら、「そんなのたまにだよ。普段はカップ麺とかも食うけど、それはSNSには上げないでしょ?」と言われて、(そりゃそうだな)と思った。

おそらくテレビが「素敵なニュース」ばかり流し出すと、僕らの心はしんどく感じるかもしれない。

 

 

そんなわけで、僕らは「情報」に右往左往する生き物なのだけど、冒頭に話に戻すと「情報」の話は絶対に今、書かなきゃいけないテーマだと思ったのだ。

 

 

ひとつの組織の中で「情報」がどれほど共有されているか。

一般的には「情報」というのは組織内の序列が高いほど多く与えられる。

情報の格差で階層分けされている。

この効果効能により、上意下達型組織がつくられる。

 

 

一方、「自分で考え、自分で行動する人」が多い組織は、情報共有がなされ風通しが良い。

リーダーから末端の者まで、全員が同じ情報を知っている。

それはなぜだろうか?という話を「不登校の子が学校に来れるようになったエピソード」で書いてみた。

たぶんこのエピソードで、この話を書き切れる人は僕だけだろうな、なんて思っている。

 

 

さて、あなたの属する組織は「情報統制型組織」だろうか?

それとも「情報共有型組織」だろうか?

リーダーの知っていることを、みんなはどこまで知っているだろうか?

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。