誰かのため、は自分のためかもしれない
土砂降りの雨のせいで新幹線が遅れていました。
夏休みに入り、少しだけ混雑した新幹線。
僕は自由席の1号車に乗り込みました。
幸い席が空いていて、3人掛けの廊下側に腰を下ろしました。
真ん中の席を空け、窓際にはスーツ姿のサラリーマンが座っていました。
大きなスーツケースを引きずった女性。
若いカップル、次々と人が行き交い、座席を探しています。
すると、幼稚園児ぐらいの子の手を引いて、お母さんが歩いてきました。
二人で座れるところを探しているようで1号車まで歩いてきたのでしょう。
結局、席が空いてなくて、お母さんは2人掛けの席に腰を下ろしました。
隣にはサラリーマン風のお兄さんが座っていました。
そして、幼稚園児のお子さんに、自分の膝の上に座るように促したのです。
名古屋から東京までは約90分。
子どもを膝の上に抱えていては、母子ともに疲れてしまいます。
僕は彼女の肩をポンと叩き、「席を替りましょう」と伝えました。
お母さんは「ありがとうございます」と頭を下げ、席を交換しました。
ただ、それだけの話です。
時間にして10秒にも満たないやり取りです。
でも、僕はその日1日幸せでした。
きっとあの母子も気分良く旅をスタートできたでしょう。
人生はこんな小さな出来事でも幸せになれる。
誰かのためにしたことで、自分が幸せを味わえるなら、これは「誰かのため」ではなく「自分のため」なのかもしれないな、と思いました。