ドーハの奇跡〜ドイツ代表に劇的勝利を飾ったサッカー日本代表を分析してみた〜


2022年11月23日は、日本のサッカー界にとって、歴史に刻まれる1日となりました。

サッカーワールドカップ初戦、日本不利の下馬票を覆し、1点のビハインドを逆転するという最高の形で勝利しました。

 

最後のテストマッチとなったカナダ戦。

そこから6人を入れ替えて大事な初戦を迎えました。

 

↑ドイツ戦のスターティングメンバー

日本はコンディションの整わなかったα守田選手、α冨安選手をスタメンから外しましたが、その他の選手はいつも通りのスタメンです。

要のα遠藤選手も戦列に復帰しました。

 

 

前線にαタイプの選手を4人並べる布陣です。

日本代表は過去6大会に出場し、全20ゴールをあげています。

そのうち、13ゴールがβタイプ、6ゴールがΩタイプとなっています。

なんとαタイプの選手の得点はロシア大会でα大迫選手があげた1ゴールだけなのです。

 

 

ちなみに、最もゴール数が多いのはβ本田選手の4ゴール。

次いで、β稲本選手、β乾選手が2ゴール、β鈴木選手、β香川選手が1ゴールと、βだけで全20ゴール中10ゴールをしています。

 

 

さて試合は前半8分、α伊東選手の早いクロスをα前田選手が合わせて先制かと思われましたが、これは残念ながらオフサイド。

α大迫選手以来のαタイプのゴールかと思われましたが、そうはなりませんでした。

 

 

でも、このゴールが認められなかったことが後の展開を日本に有利に働いたように感じました。

幸先よく先制点を挙げた後、長い長い残り時間をひたすら守りに徹してしまう、なんてことはサッカーではよくあることです。

自陣に引きこもって前に出られなくなってしまいます。

その点では0-0が続いたことで、押し込まれながらも、前に出て行こうとする気概を感じました。

 

 

まして、相手は強豪ドイツですから、先制すれば相手に火をつけてしまうことになります。

 

 

序盤からドイツ代表に押し込まれる展開が続きましたが、ドイツもドイツで、なんだか熱量を感じない展開が続きます。

「どうせいつか点が取れるでしょ?」的な空気感です。

 

 

それでも迎えた前半33分。

ペナルティーエリア内でパスを受けた選手をGKのα権田選手が倒してしまいPKを与えてしまいます。

そのPKを決められ、日本は痛い先制点を許してしまいます。

 

 

その後も一方的な展開。

何もできないまま、前半のアディショナルタイム。

ドイツが追加点となる2点目を叩き込むもこれはVARの結果、オフサイド。

 

 

あまり、残念そうでもないドイツ代表の雰囲気はワールドカップのそれにそぐわないものでした。

VARの判定ではありましたが、「やっぱオフサイドだよね」と思ったのか、「まー、後半、点が取れるでしょ?」と思ったのかはわかりません。

 

 

ただ、ハーフタイムを迎えたときのドイツ代表の空気感は「日本って弱くね?」だったのは間違いなさそうです。

 


後半、ハーフタイムにα久保選手に変えてα冨安選手を投入して3バックにシステム変更します。

αタイプの指揮官であるα森保監督は選手交代の遅さをよく指摘される監督です。

タイプ的には熟考を重ねるタイプですから仕方がありません。

 

 

ただ、今回はしっかりと対策を練る時間がありました。

ある程度、「こうなったらこうしよう」という腹づもりがあったものと思われます。

後半は矢継ぎ早に選手を入れ替え、一気に攻撃的な布陣へと変貌していきます。

 

 

いつもの日本代表なら、ズルズルこのまま、何もできずに終わっていたのです。

たぶん多くのがサポーター、「いつもの日本代表」をイメージしたことでしょう。

ここから日本は蘇ります。

ハーフタイムで変貌させてくる監督って名将ですよね。

選手に魔法をかけられる人です。

 

 

ハーフタイムの雰囲気ってすごく大切です。

もしかしたらドイツ代表、「次のスペイン戦に向けて、次につながる試合をしよう」みたいな話をしていたかもしれません。

もう勝ったつもりになって、ハーフタイムを過ごして、フワッとした気持ちで後半に入ってしまう。

そんなことってありますよね。

 

 

まして、あの前半の戦いなら、「まー、今日は勝つよね」という気持ちになってしまうのも無理はありません。

意図的にそういうゲームを作り出したなら、α森保監督はかなりの策士ですが。

 

 

 

さて、後半。 

 

後半12分にはα長友選手に変えてα三笘選手、α前田選手に変えてΩタイプΩ浅野選手がピッチに入ります。

後半26分にはさらにΩタイプΩ堂安選手が入り、α鎌田選手が1枚下がってボランチに入ります。

 

 

αタイプの選手はこのように献身的にチームに貢献する選手が多いのです。

自分が活躍することよりも、「チームのために何ができるか」を考えます。

 

 

なお、αタイプの森保監督が率いる今大会の日本代表ですが、全26選手のうちαタイプが17名、Ωタイプが7名。

なんとβタイプは2人しかいないのです。

 

 

ゴールキーパーの人選をβシュミット・ダニエル選手とα権田選手で比較したとき、最後に指揮官が決断したのがα権田選手だったのも、そんなコミュニケーションの取りやすさがあったのかもしれません。

ただ、α権田選手はα森保監督の期待に応えるように、神セーブを連発します。

 

 

さて、日本は後半30分、最後の交代カードとしてα酒井選手に変えてα南野選手をピッチに送り出します。

これで交代カードをすべて使い切るとゲームが動きます。

 

 

左サイドでボールを受けたα三笘選手がスルスルっとドリブルで持ち上がり、中央から斜めに動いたα南野選手に縦パスを送ります。

同じαの三笘選手と南野選手、まして海洋の性質をもつα三笘選手と灯火の性質をもつα南野選手はPartnerと呼べる関係性。

この阿吽の呼吸で裏に抜け出たα南野選手がシュート性のクロスを供給します。

 

 

ゴールに詰めたΩ浅野選手の目の前で、相手ゴールキーパーがセービングで弾き出しますが、そこに待っていたのはΩ堂安選手。

見事にゴールに叩き込んで同点に追いつきます。

 

 

今大会最初のゴールは、Ωタイプになりました。

さらにその8分後の後半38分。

中盤でファールを得た日本。

一瞬、スタジアムが静かになりました。

こういうなんだかよくわからないけれど、選手もベンチも観客も、フワッとする瞬間ってあるんですよね。

 

 

その瞬間です。

抜け目なく裏へボールを供給したのはβ板倉選手。

周りの空気とか関係なく貪欲に結果に繋げようとするのがβタイプの強みです。

 

そのボールに反応したのはΩ浅野選手。

この日のΩ浅野選手は、貪欲にゴールを狙う姿勢がプレーに現れていました。

それは一見、むやみやたらにシュートを打っているようにも映ります。

「自分が、自分が」という姿勢は、日本のチームスポーツでは敬遠されがちですが、大一番に強いΩタイプとしては、とても期待できる傾向でした。

つまり、「気持ちが乗っていた」のです。

 

 

ロングボールを「お見事!」としか言いようがないトラップで前を向くと、一気にゴール前まで運び、ゴールキーパーのニアサイドを撃ち抜きました。

このゴールで日本代表は逆転に成功します。

 

 

Ω浅野選手とΩ堂安選手。

2人のΩタイプのゴールで日本代表は強豪ドイツに逆転勝利を納めたのでした。

 

 

これでワールドカップの通算ゴールは22ゴール。

αタイプは1ゴール、βタイプは13ゴール、Ωタイプは8ゴールとなりました。

 

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インタビューで読み解く選手のその人らしさ

逆転ゴールを挙げたΩ浅野選手はインタビューの中で

「チャンスがあればシュートを打つことはずっと決めていた」

と答えています。

 

「対戦相手は関係なくて、僕は意識してなくて。どの相手でもピッチに立てば100%でプレーする。それだけを意識してたので」

 

 

Ωタイプらしい言葉だな、と思いました。

相手は関係ない、自分の仕事はシュートを打つこと、すなわち得点を取ること。

そのために100%のプレーをするということだけなのです。

 

ゴールが見えたら、とにかく打つ!

この試合でのプレーはまさにそんなプレーでした。

彼らの大一番での強さは、難しいことを考えず、自分のすることをするだけだという、ある種の開き直りとも取れるような覚悟がなせることなのかもしれません。

 

同点弾を決めたΩ堂安選手も

「俺が決めるという気持ちで入りましたし、俺しかいないと思ったので。強い気持ちで入りました」

と答えています。

 

 

「俺が決めるんだ!」

 

これしかないわけです。

非常にシンプルです。

1点ビハインドの状況で考えることは「俺が決めるんだ!」しかないのです。

 

Ωタイプらしい言葉といえば、Ω遠藤選手の言葉も印象的でした。

「非常に厳しい戦いになりましたが、個人的には4年間ブンデスでやってきたことを証明できた。正直、この試合にかけていた。対ドイツということで」

Ω遠藤選手はインタビューの中で何度も「個人的には」という言葉を使っていたのが印象に残りました。

 

 

 

スペインでもコスタリカでもなく、ドイツなんだ。

1試合目はドイツなんだ、と。

まさに「個人的」なのですが、そこが大事なんです。

 

 

これはβタイプにもΩタイプにも言えることかもしれません。

まず自分が求める結果に向かってプレーをする。

その延長線上に、チームとして最高の成果があると考えるのです。

自分が活躍してチームも勝つ

これがやはり理想なのです。

 

 

α長友選手のインタビューはαタイプらしいものでした。

「ピッチで出ているときも出ていないときも常に一緒に戦っていたし、ベンチも含めてみんな心がひとつになっていたから、この勝利はたくさんの人が応援もしてくださったし、歴史的瞬間だね。嬉しいね」

 

α酒井選手も「26人で勝ち取った勝利だと思います」と答えています。

α鎌田選手も「僕たちはこういうプレーを続けていくことが大事」と答えています。

 

 

みんなで勝ち取った勝利なのです。

それは試合に出ている選手も出ていない選手も同じです。

 

 

これはきっと試合に出なかったサブのメンバーも同じです。

試合に出ていなくてもチームの一員として勝利に貢献したわけです。

αタイプの選手のベンチでの喜びと、βタイプがベンチで感じる喜びと悔しさが入り混じった気持ち。

 

 

このコントラストを、α権田選手のもとに駆け寄るβシュミット・ダニエル選手の表情から感じました。

彼はチームの中で唯一試合に出られなかったβタイプになります。

「自分はチームのために何もできなかった」となりやすいので、ぜひチャンスを与えてほしいな、と思いました。

 

 

Ωタイプは、シンプルに勝ったことはうれしいし、「次は俺も!」と切り替えていることでしょう。

F.W.で追加招集されたΩ町野選手は「次は俺がゴールするぞ!」と意気込んでいることでしょう。

 

 

 

さて、αタイプα森保監督はαタイプを17名も召集しました。

シーズン中のワールドカップは異例であり、これまでと比べて十分な合宿時間が作れません。

チームとしてまとまる時間が短いのです。

カナダ戦のわずか1試合でワールドカップに臨まねばならなかったんですね。

 

 

短期間でチームに一体感を持たせるために、集団の和を大切にした選手選考だったのかもしれません。

そして、固定メンバーでここまでやってきたのも、そんな意図があったのかな、と思います。

 

 

そして、これまで様々な批判をすべて受け止めたうえで、多くのサポーターの予想を良い意味で裏切る見事な采配。

αらしい策士な一面を見せてくれました。

 

 

せっかく招集したからには、多くの選手を使ってあげたいと考えるでしょう。

ドイツに勝利したことで、ある程度余裕をもった戦略が組み立てられそうです。

次戦に向けて、どのような選手起用をするのか、とても楽しみです。

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。