本当の行動力って何だい?


「くれちゃんって行動力があるよね」とよく言われる。

それが僕にはさっぱりピンと来ない。

 

 

やりたいことをただやってるだけ。

「よしっ!がんばって行動するぞー!」なんて思ったことがない。

 

 

それで、そんな話をしていたら、ある人が「私も行動するのって大事だと思うよ」と言った。

その人は友達に誘われたら、やれ沖縄だ、やれ東京だとフットワーク軽く行動している。

周りの人からは「行動力のある人」と思われているのだそうだ。

 

 

で、僕はそのとき、何を思ったかというと、その「行動力」と僕の中にある「行動力」は別物なんだよな、ということである。

でも、その違い、違和感みたいなものを、そのときは言語化できなかったのだ。

というわけで、これを読んでいるあなたにも考えてほしい。

 

 

「行動力って何よ?」ってことをね。

 

 

行動力を再定義する

僕が「あの人、行動力あるなー」と思う人をざっと並べておく。

 

 

島根県のとある離島に移住したスポーツメンタルの先生。

広島県で突然国会議員に立候補した女性起業家。

日本にパリコレを誘致してキッズファッションショーを開催した実業家のご夫妻。

日本中のサウナを取材してサウナの本を作った編集者。

ショービジネスの世界で活躍したいと渡米した女性の書道家。

 

 

僕の周りには、そういう人たちがたくさんいる。

たくさんいるがゆえに、自分が「行動力がある」とはカケラも思えないわけだけど。

 

 

じゃあ、これがフットワーク軽く「あちこちに飛び回ってます」みたいな行動力と何が違うのだろう?

こうやって考えてみると、自分の中の言葉の定義が明確になる。

 

 

「あぁ、そうか」と思った。

僕の中にある行動力の定義は「リスクを背負う」なのである。

 

 

文部科学省の派遣教員として上海日本人学校に赴任した。

僕はそれまで、それなりに出世のレールに乗っていたし、研究会でも活躍していたし、何より市内で最も大変な中学校で生徒指導主事をしていた。

 

 

そのまま過ごしていれば、やがて出世していく。

そんな教員人生だった。

 

 

そんな折、管理職から「くれちゃん海外に行ってみない?」と声をかけられた。

まったく興味がなかったので即答でお断りしたのだけど、帰宅して海外赴任の話をしたら、妻が「私は行きたい」と言う。

そんなわけで、翌日、「海外、行きます」と伝えた。

 

 

僕はわりとテキトーな人間である。

考えているようで、そんなにも考えていない。

流れに身を任せていることが多い。

 

 

「なんか面白そう」という理由で海外へ行くことを決めた。

 

 

教育委員会の面接で、「海外で先生をすること」に対する志しをいろんな先生が熱く語っていた。

僕にはまったくそんな「熱い思い」がなかった。

  

 

「妻が行きたいと言ったから」

 

なんてわかりやすく、薄っぺらい理由だろう。

とはいえ、教育委員会の面接も、文部科学省の面接もドライブスルーのようなスピードで通過し、僕の海外赴任が決まった。

 

 

そんなこんなで上海に渡り、そこでいろんな起業家に出会った。

挙げ句の果てにマツダミヒロさんに出会ってしまい、「時間と場所に縛られない生き方」なんての知ってしまったから、さあ大変。

帰国して2年後、すべてのキャリアを捨てて、起業家の道を歩むことになる。

 

 

年齢は38歳。

妻と3人の子どもがいるお父さんである。

いやはや、お金との戦い。

 

 

そういうリスクを負って、僕はビジネスを構築し続けてきた。

 

やったことのないことをやる

2016年だったか、沖縄で開催された第1回の「しつもんカンファレンス」。

僕はまだ学校の先生だったけれど、沖縄に行った。

 

 

カンファレンスの体験は本当に素晴らしく、それで僕は愛知県に帰ってきて『子育てカンファレンス』という企画を立ち上げた。

企画を立ち上げたらミヒロさんから「それ、完全招待制だよ」という、たったこれだけのメッセージが届いた。

 

 

思えばこのメッセージが、僕の人生を変えることになる。

このイベント、広く募集をすることはしなかった。

直接声をかけて、来てほしい人に来てもらう、まさに完全招待制でやり切った。

 

 

僕は「集まらない」というリスクを背負って行動した結果、満員御礼にすることができた。

その後も、妻がいろんなところから持ってくる企画を、僕はひたすら「声をかけて集める」という手法で集め続けてきた。

 

 

あるとき、月曜日の午後2時から講演会をしたい、という話を持ってきた。

平日の午後2時に人を集めるのは不可能だ。

しかも、講師料は10万円だと言う。

 

 

講師側から提案され、破格の講師料だと言うのだ。

「知らんし、そんな奴」が僕の最初の感想。

 

 

1000円で100人。

3000円で34人。

5000円で20人。

集客期間は実に3週間。

わりと無理ゲー。

 

 

それでも僕は集め切った。

赤字にはしなかった。

こういう経験が僕をタフにしていったと思う。

 

 

極めつきは、クラウドファンディングだ。

当時のクラファンは、まだキングコングの西野さんがやり始めたばかりの頃で、世間から叩かれる資金調達方法の代名詞だった。

僕は彼のブログや本を読みながら、「クラファンって面白い仕組みだな」と思った。

 

 

そこで、県内8会場で映画上映会を開催したのだけど、そのときクラウドファンディングを利用した。

基本的に僕は「やってみたいこと」をやってみることが楽しい。

 

 

逆に1回やると、それで満足してしまう、もう1回やろうというエネルギーが湧かない。

これはどういうことだろう?

 

 

やり方がわかってしまうと面白くない

『子育て万博』という大きな施設を丸ごと借り切ってのイベントを開催したのが2018年。

翌2019年にも第2回を開催した。

スタッフと来場者合わせて300人ぐらいになっただろうか。

 

 

第3回は、コロナ禍で中止になってしまったのだけど、正直いえば僕の性格ならば「それでもやる!」と押し切れる時期だった。

コロナが流行りかけていた頃だ。

 

 

でも、僕にはもう、無理してまでやるエネルギーがなかった。

情勢が悪くなると、そそくさと中止を決定してしまったのだ。

 

 

あらゆる企画がそうなのだけど、2回目になるとモチベーションが下がっている。

一度やったことは、やり方がわかっているから、失敗のリスクがない。

すると、急に自分の中の新鮮さがなくなってしまうわけだ。

 

 

「新鮮さ」は大事だ。

新しい気づきとか、新しい出会いとか。

でも、それだけではワクワクできない。

 

 

僕が欲しいのはリスクだ。

失敗したら失うものがあるというハラハラした、ヒリヒリした気持ち。

 

 

だから、一度うまくいくと、次もうまく行くとわかっているので燃えない。

厄介な性格だと思う。

 

 

会社を作る。

本を書く。

TikTokを配信する。

事業再構築補助金の申請をする。

アプリを作る。

 

 

どれも失敗するリスク、誹謗中傷されるリスク、無駄になるリスクがある。

そういうリスクは心が傷つく可能性があるから、みんな躊躇する。

 

 

そういうことにワクワクしながら、リスクを背負って生きているのは楽しい。

 

 

安定が愛おしい

とはいえ僕だって「安定」って言葉が愛おしくなるときがある。

公務員だったときは、決まった日に決まった金額が振り込まれていた。

 

 

来月突然増えることもないけれど、突然減ることもない。

お給料の範囲で生活していれば、家族が路頭に迷うこともない。

それはそれで幸せなことだと思う。

 

 

今の僕は今月の売り上げが来月もあるわけではない。

身体を壊して働けなくなったら、何の保証もない。

不安定極まりない暮らしをしている。

 

 

長男はデンマークに留学をし、娘は「美大に通いたい」と言い、妻は「働きたくないけど、好きなことをしていたい」と言う。

家族の口から出てくる言葉は基本的に「お金が出ていく話」であり、僕は一人で「そのお金をどう生み出すか」を考え続けている。

 

 

この、お金に関してはなかなかハードモードな毎日を、なんとか自分の才覚で乗り越えていくのはシンドいと感じることも多い。

自由な生き方・働き方を手にいれるために、安定を手放したのだから仕方あるまい。

 

 

こんな働き方をしていると、多くの人から「私も独立起業して、くれちゃんみたいな働き方がしたい」と言われることがある。

僕は基本的に「やめておいた方がいいよ」という話をする。

キラキラ系起業女子の皆様には申し訳ないけれど、そんなにキラキラしてねーぞ!と思うわけ。

 

 

お金の意味を定義する

仕事の話をしたので、ついでに伝えておきたいのが「お金」の話なんだけど。

職業柄、「自分の力で稼ぎたい!」という女性に出会うことも多い。

 

 

「いくら稼ぎたいの?」と尋ねると、「月々10万円ぐらい自由になるお金がほしい」と言う。

時給1000円のバイトを1日5時間、20日稼働すれば稼ぐことができる。

それで「バイトしたら?」と伝えると、だいたい嫌な顔をされる。

 

 

僕にはそれがわからない。

なんでわざわざ起業しなきゃいけないのか。

 

 

僕にとってのお金は「可能性を拡げてくれるもの」という定義だ。

お金があれば幸せだとは思わないけれど、お金がないと極端に選択肢が狭くなる。

 

 

長男はデンマークに留学に行っている。

我が家にお金がなければ、「留学したい」という思いを持つことすら許されなくなる。

「美大に行きたい」という娘も、「大学に行く」という夢を持つことすら許されなくなる。

 

 

以前、「お金がなくても事業ができます!」という人がいた。

その人に、「でもさ、予算が10万円あったら何する?」って尋ねたら、「だったら、こんなことがしてみたいです」と答えた。

「じゃあ、100万円あったら?」と尋ねたら、もう瞳をキラキラさせて「こんなこともあんなこともできる!」と話してくれたのね。

 

 

そう、お金は可能性なんだな。

それをどう使うかが重要なんだけど、多くの人はそれを消費と浪費に変えてしまう。

旅行に使うとか、服を買うとか、車を買うとか。

 

 

んで、「自分へのご褒美だ」とか「これは意味があるんだ」とか色々ないいわけをする。

そのお金の使い方は未来の可能性を拡げているだろうか?

そんなことを僕はいつも考えている。

 

 

会社を作る。

そのために名刺を作り、ホームページを作り、アプリを作る。

どれもお金がかかるのだけど、それによって可能性が拡がっていく。

 

 

「学び」もそうで、学んだことはすぐ行動する。

お金を使って学んでも、それを生かさなければ未来は何も変わらない。

お金は可能性を拡げ、選択肢を増やす、とってもありがたいものなのだ。

 

 

期待感をお金に変えている

お金の話が出たので、ビジネスについても再定義しておきたい。

僕は自分が価値のあると思っているもの、つまり商品を、必要としている人の前に置いてくることがビジネスだと思っている。

 

 

だから、価値のあるものを作らなければならないし、商品を必要としている人を見つけなければならない。

 

 

たとえば僕の場合、「講座」が一つの商品である。

だから、多くの講師はこの「講座」が良ければ売れると勘違いする。

でも、実際はそうではない。

 

 

「参加申し込みをしたとき」が売れたときである。

良い講座かどうかは、実は申し込んだ時点ではわからない。

 

 

講演会とかも同じで、「良い話をする」から人が来てくれるわけではない。

良い話が聞けるかもしれないという期待感で申し込んでくれるのだ。

 

 

ということは、いかにして「期待感」を届けるか、が大事になる。

つまり、僕の場合は「期待感」を目に見える形にして、必要としている人の目の前に置いてくる。

申し込んでいただいた方には、その期待に応える最大の努力をする。

 

 

それが僕の仕事だと思っている。

これもまた「リスクを背負っている」と言っていいだろう。

 

 

みんなの期待を煽っておいて、期待外れの講座をしたら大変なことになる。

僕はこれまで、自分の講座だけでなく、いろいろと主催もしてきた。

すると、残念ながら期待外れのものもあり、そんなときは苦虫を噛み潰す想いになったものだ。

 

 

僕がだんだん人の講座を主催しなくなったのは、他人の出来不出来というリスクを、僕が背負うのは「なんか違うんじゃね?」と思ったからだ。

逆に、僕は主催をしてもらって地方都市に出かけていくことが多い。

そんなときは、絶対に主催者の期待を裏切らないことをすると心に決めている。

 

 

リスクを背負って冒険しよう

挑戦するときは、いろんなリスクを背負うことになる。

「講座をやる」と決めたら会場を予約する。

いろんな準備をする。

 

誰も来なかったら、恥ずかしい思いをするだろう。

会場費も無駄になるだろう。

何より自分のプライドが傷つくだろう。

 

 

そういうリスクを背負って行動する。

こんなにもヒヤヒヤで、ハラハラで、ドキドキすることはない。

はっきり言って、講座で稼ぐなんてコスパが悪い。

 

 

時給1000円で、1日5時間、20日働いたら10万円もらえるのだ。

絶対にもらえるのだ。

 

 

100時間、がんばって集客しても、誰も来ないかもしれない。

そしたら、ゼロ円だ。

それでもいいのかい?

 

 

こういうリスクを背負って生きるために何が大事だと思う?

それがリスクヘッジする力だ。

リスクを背負う代わりに、そのリスクから想定されるダメージを低減するための努力を徹底的にやる。

 

 

リスクに対して丸腰の人が多すぎる。

だから、失敗が怖くなる。

リスクに備えた上でリスクを取れば、人はきっと誰でも行動的に生きられるのである。

 

じゃあ、僕はどうやってリスクに対して備えているのだろう?

…そんな話に興味のある人がいれば、また書きたいと思う。

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」として人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・2018年~2019年 100人のボランティアスタッフをマネジメントして『子育て万博』を主催。

・2021年~2024年 パリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフのマネジメントを担当。

・経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムCrewDocks®︎を開発。企業研修など精力的に活動中。