雨の中を歩くクラスメイトに、息子が手を振ることをやめたワケ


台風と梅雨前線が重なって記録的な大雨になった。

全国各地で休校が相次ぐ中、息子の学校は平常運転とのことで、意気揚々と登校していった。

ところが、降り続く雨はいよいよ勢いを増し、学校から緊急のお便りが届く。

  

午前中で授業は打ち切りとなり、保護者が車で迎えに行くか、徒歩で帰宅させるかの選択を迫られた。

僕は迷わず「お迎え」を選択し、車を走らせたわけだけど、途中で何人かの小学生とすれ違う。

傘はその役目を果たさず、子どもたちはすっかり濡れ鼠となっていた。

  

教室で息子と再会し、車に乗って帰路につく。

道すがら、自宅近くの交差点で彼は同級生を見かけた。

彼らはすっかり雨に濡れて意気消沈していた。

  

息子が車の窓を開けて声をかけようとした瞬間、

「やっぱりやめておこう」

と言うので理由を尋ねた。

  

「雨に濡れて帰った子たちの気持ちになって考えたら、車から手を振るヤツはうざいと思うんだよね」

  

その通りだな、と思った。

彼は寸でのところで思いとどまり、優越感に浸った小憎らしいクラスメイトにならずに済んだわけだ。

  

たとえば、彼らも同じように車中にいて、手を振ったならば何のわだかまりも生まれない。

しかし、雨の中を大変な思いをしている友人に手を振れば、いらぬシコリを残すことになる。

  

同じことをしても、相手の立場や状況によっては、相手の気分を害することになる。

そういうことを、僕らは忘れがちだ。

人間関係には、相手の状況を配慮する必要である。

 

 

相手の立場になって考える。

こういう感性をもった我が子を誇らしく思いながら、気づくと自宅のガレージに近づいていた。

どうやら雨はまだ止みそうにない。

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。