雨の中を歩くクラスメイトに、息子が手を振ることをやめたワケ
台風と梅雨前線が重なって記録的な大雨になった。
全国各地で休校が相次ぐ中、息子の学校は平常運転とのことで、意気揚々と登校していった。
ところが、降り続く雨はいよいよ勢いを増し、学校から緊急のお便りが届く。
午前中で授業は打ち切りとなり、保護者が車で迎えに行くか、徒歩で帰宅させるかの選択を迫られた。
僕は迷わず「お迎え」を選択し、車を走らせたわけだけど、途中で何人かの小学生とすれ違う。
傘はその役目を果たさず、子どもたちはすっかり濡れ鼠となっていた。
教室で息子と再会し、車に乗って帰路につく。
道すがら、自宅近くの交差点で彼は同級生を見かけた。
彼らはすっかり雨に濡れて意気消沈していた。
息子が車の窓を開けて声をかけようとした瞬間、
「やっぱりやめておこう」
と言うので理由を尋ねた。
「雨に濡れて帰った子たちの気持ちになって考えたら、車から手を振るヤツはうざいと思うんだよね」
その通りだな、と思った。
彼は寸でのところで思いとどまり、優越感に浸った小憎らしいクラスメイトにならずに済んだわけだ。
たとえば、彼らも同じように車中にいて、手を振ったならば何のわだかまりも生まれない。
しかし、雨の中を大変な思いをしている友人に手を振れば、いらぬシコリを残すことになる。
同じことをしても、相手の立場や状況によっては、相手の気分を害することになる。
そういうことを、僕らは忘れがちだ。
人間関係には、相手の状況を配慮する必要である。
相手の立場になって考える。
こういう感性をもった我が子を誇らしく思いながら、気づくと自宅のガレージに近づいていた。
どうやら雨はまだ止みそうにない。