産んだ覚えのない長男をそのままにしておくとパートナーシップは地獄です。

年老いた夫婦

子育てが終わり、やっと自由に羽が伸ばせるわ。

そう思っていた奥様の、たった一つの懸念材料は産んだ覚えのない長男の存在でした。

 

 

彼の名を「旦那様」と世間は呼んでいました。

 

 

ところで、男はいつまでも子どもでいたい生き物だそうです。

 

 

あ、こんなふうに決めつけられるのが、男性はイヤみたい。

「あなたはこういう人」と決められるのは、なんだか上からものを言われるみたいで、不愉快になるんだそうです。

 

 

ちなみに、女性は言い当てられると、「私のことをわかってくれてる」と感じて、うれしいのだそうです。

女性は「共感」を大事にしますからね。

じゃあ、男性は何を大事にしているでしょうか。

 

 

 

それは「序列」です。

 

 

カルチャーセンターにはいろんな趣味の講座があります。

それで講座が終わると、女性陣は年齢を問わず、みんなでお茶をしに行ったりするわけですが、男性陣はなかなかそういうフラットな関係にはなりません。

 

意を決してお茶に誘ったら、途端に名刺交換が始まったのだそう。

名刺を見て、業種や役職という序列が見えて安心するようです。

 

 

初対面の男性同士が集まると、「おいくつですか?」という年齢確認が始まります。

女性に年齢を尋ねるのは失礼だという意見がありますが、そもそも女性は人間関係において「序列」をそれほど重要視しませんから、相手の年齢に対してそれほど興味がありません。

 

 

男性が女性の年齢を尋ねて地雷を踏むのは、「序列」を脳みそが気にしてしまうからです。

 

 

さらに、この序列脳は厄介で、「年上の部下」「年下の上司」が生まれると、さらに混乱します。

年功序列は男性の脳にとって、極めてわかりやすいシステムだったとも言えます。

 

 

女性にお母さんを求めてしまう男性

さて、男性はどれだけ成長しても、内側は子どものままです。

女性のように妊娠や出産、授乳などを経験することはありませんし、定期的に月経がやってきて、その都度体調が変化するなど、年齢を経て精神と肉体が成熟していく実感が、男性にはありません。

 

第二次性徴以降、衰えという名の肉体的な変化はあれど、成熟していく感覚は実感しにくいといえます。

早い話、、精通をしてから、ずっと子どものままなのです。

 

ですから、女性に対して「お母さん」を求めてしまうところがあります。

内面が子どものままなんです。

 

 

自分が何をしても見守っていてくれる優しいお母さん役奥さんに期待してしまうわけです。

 

 

旦那さんが、仕事でこんなことがあった、あんなことがあったと話してきます。

それが苦手だとおっしゃる女性がいらっしゃいました。

 

 

子どもが家に帰ってくると、「今日、こんなことがあった」と話しかけてきますよね。

あれと同じです。

上司への報告なのです。

ただ褒めてもらいたいだけです。

 

 

そういえば、給料は今、銀行振り込みです。

昔は物騒なことに現金を手渡ししていました。

 

 

すると、お父さんは給料日には、たっぷりお給料の入った給料袋を持ち帰ったわけです。

必然的にお父さんは労われることになりますし、感謝されますし、褒められます。

モチベーションアップに効果的だったのです。

 

 

そう考えると、年功序列と給料袋は男性脳に非常に効果的で、高度経済成長を支えてきたのかもしれません。

 

 

お父さんの子ども化によって、家事も育児も参加しない「産んだ覚えのない長男」が世の既婚女性を悩ませることになります。

 

男は子どものまま、母は女性に

 

男性は子どもでいたいのですが、女性はいつまでも女性でいたい生き物です。

一時は「母」「ママ」と呼ばれたとしても、やがては「女」に戻るわけです。

 

 

ですから、いつまでも若々しく綺麗でいたいし、おしゃれだってしたい。

いつまでもときめいていたい、キラキラしていたいのです。

 

 

お年を召していても、女性を女性として丁重に扱うと大変喜ばれます。

 

 

旦那さんが子どものままでいると、子育てを終えてキラキラ輝きたい女性にとっては、手枷足枷重荷になります。

 

 

以前、旅行に出かけたときのこと、背筋のシャキッとしたお婆ちゃんが、ヨボヨボのお爺ちゃんを叱っているところを見かけました。

「シャンと歩いてよ」と怒鳴る奥様と「もう疲れた」と言って座り込む旦那様。

それは奥に広がる境内の入り口だったのですが、お土産屋さんが立ち並ぶ参道だけで、もう疲れてしまったようです。

 

 

「もう私は先に行くからね」とスタスタ歩いていく女性を見送り、男性に目をやるとションボリ足下に視線を落としておりました。

 

 

定年を迎え、会社という序列の世界を失うと、男性はすごい勢いで老けていきます

「産んだ覚えのない長男」が、やがてあなたの行動を妨げる介護の対象に変わるとしたら、なかなかの悪夢です。

 

 

男性は「成長」を望みます。

レベルアップすることで、序列を上げることができるからです。

 

 

一般的に、男性はほっておくと、家事や育児をしません。

家庭に限らず、ボランティア活動などでも、手持ち無沙汰になりがちです。

ただし、やる気がないわけでもサボっているわけではないのです。

なにをしていいのか、わからないのです。

 

 

「じゃあ、聞けよ」と思われるでしょうが、基本的に男性は指示を待っています。

子どもがお手伝いをお願いされて渋々言うことを聞くように、男性もまたお願いされて渋々動くのですね。

 

「ふざけるな!」と思われるでしょうが、子どもなのです。

ですから、言われたら動くけど、言われなければ動きません。

 

 

ところが、面白いことに彼らに「役職」を与えると、張り切って仕事をします。

「鍋奉行」や「BBQの焼き係」などは顕著な例で、役割が明確になると、男性は働者に変身します。

 

 

運動会の場所取りに行ったら、世のお父さんたちで長蛇の列でした。

みんな、大きなビニール下を脇に抱え、意気揚々とした表情でした。

ただ並んでいただけです。

 

 

でも、家族のため、年に一度の運動会の場所取りという重要タスクを承った彼らはギラギラと自分をたぎらせていました。

 

フェンス越しにグラウンドを眺め、パンフレットで我が子の座席を確認し、当日の天気も考慮して、どこに陣取ろうかと思案に思案を重ねながら、開門時刻を待ち侘びていたのです。

 

自分から仕事を探しはしないけど、役割を与えられればがんばる!

まさに、子どもと一緒なのです。

 

 

どう生きたらいいか迷子になる男性

そういう男性が、定年後「序列の世界」を失います。

日々のタスクから解放されます。

成長の機会はもう与えてもらえません。

 

 

これはわりと悪夢です。

「どう生きたらいいかわからなくなる」のです。

 

 

家事に育児に忙しいママたちは、みんな「時間がほしい」と言います。

やりたいことがいっぱいあるのです。

 

 

ところが、そのタイミングで「何をしていいかわからない男性」が一日中家にいるとしたらどうでしょうか。

 

男性自身も今から考えておくべきことかと思います。

 

 

昨今は恐ろしく「老後」が長い社会です。

健康にポックリとは死なせてくれない社会でもあります。

どれだけヨボヨボになっても生き続けることを強要されるのです。

 

 

生きなきゃいけないんですね。

 

 

この、圧倒的に長い長い老後、女性はやりたいことで溢れている。

男性は何をしていいかわからない。

 

 

仕事、仕事、仕事。

成長、成長、成長。

 

そんな日々を過ごしていると、その後の人生は苦しいものになる可能性が高まります。

 

 

そのために取るべき方策は2点。

 

 

ひとつは、よりよいパートナーシップを育むこと。

今一つは、定年後も生き生きと過ごせるコミュニティに男性も加わっておくこと。

 

 

やりたいことをやるためには、産んだ覚えのない長男の進路指導を早めにしておくことが大切なのかもしれませんね。

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。