正しさを主張するときは、その根っこに何が流れているかが重要なんだよ


2024年、元旦。

サッカー日本代表の試合を子どもたちとテレビ観戦していた。

久しぶりに実家に帰り、テーブルには美味しそうな料理が並んでいた。

 

 

小さな揺れを感じ、それはやがて大きくなり、隣に座っていた次男くんの手を握った。

テレビは緊急速報に切り替わり、石川県を中心とした地震の模様を伝えた。

 

 

天変地異は盆や正月は避けてはくれない。

そんなことは当たり前かもしれないけれど、まさか元旦からこんなことになろうとは、思いもしなかった。

 

 

まだまだ揺れが続くかもしれないけれど、まずは少しでも早く平穏な日々を取り戻すことを願いたい。

さっそくテレビは自粛モードで、正月らしいテレビ番組は何もなく、静かな2024年の幕開けとなった。

 

 

ちょうどNHKをつけていたので、緊急速報中鬼気迫る声で「早く逃げて」と伝える女性アナウンサーに感心した。

緊張感を伝える表現力。

さすがである。

 

 

ところが、X(旧ツイッター )を眺めていたら、このアナウンサーの表現を批判している人もいるらしい。

本当に世の中は不思議である。

 

 

1月1日、元旦。

そんな日でも働いている人たちがいる。

こんな日に地震なんて。

彼女はそんな危機にマイクを握り、声を枯らして伝えるべきことを伝えたのである。

賞賛しかないし、感謝しかない。

そういう人を何もない安全なところから叩く神経というのは、いかようなものだろうか。

 

 

SNSが普及して、人間の汚い部分が可視化されたように思う。

 

 

去る年の瀬、紅白歌合戦を眺めていたら、けん玉でギネスに挑戦するという企画が放送されていた。

毎年行われている企画で、歌手が歌っている間に、百数十人の人が連続でけん玉をしていく。

 

 

それで、そのギネス挑戦中、失敗してしまった男性がいた。

番組スタッフが気づかなかったのか、一度は「ギネス認定」されたものの、あとで訂正されて記録更新とはならなかった。

 

 

すると、その映像が早速、X(旧ツイッター )にアップされていた。

「この人は失敗しているぞ」と、文面から投稿者のうれしい気持ちが伝わってきた。

何か犯人でも見つけたかのように嬉々としている。

 

 

人の失敗を笑う。

それはなんとも浅ましいことではあるのだけれど、SNSという空間はそれを平気でやらせてしまう。

 

 

では、僕の心にそういう浅ましいところはないだろうかと自問自答してみる。

人の失敗を笑ったり、がんばっている人を揶揄したり。

そういうことがカケラもないかと問われれば、そんなことはない。

 

 

表現するかしないかの差はあるけれど、そういう下品な部分は確実に存在すると思っている。

自分自身が自分自身の下品な部分を認知しているからこそ、そのような下品な投稿に心が動かされる気がする。

 

 

人は誰もが善人でありたいと願っている。

善と悪というものを明確に線を引くのは難しいものだ。

 

 

緊張感を伝えるアナウンサーを批判することも、ギネス達成と認定したことが誤りであることを指摘することも、どちらもきっとその投稿した人にとっては善だと思った行動なのだろう。

 

 

それを否定する僕もまた、僕の中の善がそうさせるのだ。

僕らを取り巻く世界はたくさんの善や正義が溢れていて、それらがぶつかり合っている。

それはとても不思議な世界だと思う。

 

 

そんなことを朝から考えていたら、ちょっとほっこりする投稿も見つけた。

 

 

近所にいかにも怪しい車が停まっていたらしい。

柄の悪い車と表現しておこう。

そこに柄の悪い連中が屯(タムロ)していた。

 

 

車に布団などを詰め込んでいたので、投稿主は思い切って声をかけた。

すると、彼らは今から石川県に救援物資を届けにいくと言う。

 

 

それで、投稿主は財布の中の有金全部、彼らに渡したという。

春から一文無しになったと笑っていた。

 

 

ここにも善や正義が溢れていて、でもそれは温かくてキラキラ輝いていた。

 

 

ああ、そうか。

善や正義はその根底にドロドロとした黒いものがあるか、それともキラキラとあたたかいものがあるかで、届くものが違うのだな、と気づいた。

 

 

根っこに何があるか。

土の中にある根は見えないけれど、それが一番大事なんだな。

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。