コンプレックスさえ武器にする覚悟

教員採用試験 大学生

中学生の洗礼!

僕は意気揚々と校舎へと続く廊下を歩いていた。着慣れないスーツに身を包み、不安と期待を胸に教室へと向かった。大学を出たての4月。僕は、新任の教師として中学生の前に立っていた。

 

さて、あるときの廊下からこんな言葉が聞こえてきた。「お〜い!」と手を振る女子中学生。ふと視線をやると、全然知らない子たちだった。他の学年の子だろう。

 

すると、彼女たちは笑いながらこう言った。

「キモっ!」

そして、それ以上は何も言わずに去っていった。

まだ、「キモい」「ウザい」がメジャーではない時代だった。

「キモってなんだ?」

わけがわからない気持ちだった。僕は、自分の担任する教室に行くと、子どもたちに尋ねた。

 

「ねぇ、『キモ』ってどういう意味なの?」

 

「え〜、先生知らないの?気持ち悪いって意味だよ」

 

ガ〜ン…。

 

気持ち悪い…。

気持ち悪い…。

気持ち悪い…。

気持ち悪い…。

 

大学出たてのピチピチ(死語)の新任教師。

見た目は、普通だろ?

いや…、っていうか君ら、だれだよ?

しゃべってこともないぞ!

全然気持ち悪くないし!

いや待て!ホントは気持ち悪いのか?

俺は気持ち悪いのか〜〜〜っ!!

 

そう!

超ショックを受けました。

 

コンプレックスさえも武器にする覚悟

それが5年もすると、何言われても平気になります。

「しゃくれ」

「薄毛」

「ウザい」

「キモい」

ど〜んと来い!って感じです。滑舌が悪いと真似されたりなんて、もうヘッチャラです。

 

トレンディーエンジェルや森三中に妙な親近感を覚えるんですね。あのタフさ、先生という職業には必要だなって思うのです。中学生ってコンプレックスに感じるようなところ、平気で突いてきます。

特に若いころって、そんなところがあります。

 

でもね、いつしか気づいてしまったんです。それって、子どもたちの求愛行動なんですね。「構って光線」なんです。

 

だから、そんなときは全力で受け止めてあげるんです。「しゃくれ」って言われたらね、「この鋭利なアゴで、攻撃するからな。痛いぞぅ」ってやり返す。「ハゲ」って言われたらね、「お兄さん、トレンディーだね。う〜ん、トレンディーエンジェル!」ってやる。そのぐらいの覚悟が必要です。

 

と、そんな学校ばかりではないかもしれませんが、これから先生を目指す学生さんは、覚悟があるといいですね。そういうものも受け止めきれる覚悟はありますか。

 

「そんなの情けない!ビシっと注意しなさいよ」って思うかもしれません。でもね、たとえばあなたがすごく太っていたとしよう。で、子どもたちが「デブ!」って言うんです。これね、結構注意とかしづらいの。で、怒鳴っちゃう先生もいる。でもね、そういうのが一番のカモなの。だって、怒らせたいんだもん。

 

ハッピーな先生になるためのステップ

 コンプレックスさえも武器にする覚悟をもつ

 

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。