教育実習生だろうが大切なのは一つだぜ。
「先生がクソつまんないんですけど」
そんなことは口が裂けても言えないけれど。
あれはまだ、僕が教育実習生のときのお話。
学校の立て直し方を尋ねられる教育実習生
2週間の教育実習が終わり、実習校の教頭先生に誘われて飲みにいったんです。
呼ばれたのは、その高校で講師をしていた先生。
この先生たちがクセもので、実はサッカー部の先輩。
当時はかなりとんがった先輩でした。
で、テーマは「ウチの高校をどうやって立て直すか」。
そんな大事なテーマを講師と教育実習生に聞くあたり、教頭先生がいかに困っていたかがよくわかります。
ちなみに、キレイにワリカンでした…。
なにせ、先生たち、全然授業が成立していないんですね。
どの教室も崩壊しています。
あるクラスを見にいったら、全員寝ています。
全員です。
もう一回書いておきます。
全員です。
そして、先生は一言も発せず、黒板を書き続けています。
右端から左端まで、ぎっしり板書。
どうするかな〜と思ったら、右端の板書を消して、また書き始めたのです。
真面目なことはいいことですが…
そんな板書だけで進行していく授業。
アクティブラーニングの「ア」の字もない、今から16年以上前のお話です。
でもね、さすがは教育実習生たちです。
ちゃんとメモを取っています。
途中退席する教育実習生は僕だけでした。
「つまんねえ」
授業中立ち歩こうが騒ごうが先生たちはだれ一人声をかけません。
実習生の控え室では、みんな涙を流し、励ましあっていました。
「辛いね」
「がんばろうね」
で、僕は…。
教育実習生、生徒指導に励む
授業中に漫画を読んでいる子がいたんですね。
「ねえねえ、ちょっと見せてよ」
彼が手渡した漫画は「ドラゴンヘッド」。
なんだかおもしろそう♡
「これって何巻まであるの?」
「全巻、揃ってるの?」
「今、あるの?」
聞けば、ロッカーに全巻揃えてあるんだそう。
でもね、いろんなクラスに散りじりになっているんだとか。
「次の時間までに全巻揃えて控え室に持ってきてくれない?」
生徒たちは学年中に散らばったドラゴンボールならぬ「ドラゴンヘッド」をすべて集め、僕のもとに届けてくれました。
そうなると大忙しです。
せっかく集めてくれた漫画を読まないわけにはいきません。
「目の前の子どもたちをハッピーにすること」
それが僕の志事ですから。
涙に濡れる実習生の横で、僕は必死になって「ドラゴンヘッド」を読破していました。
気がつけば、実習生なのにほぼ学活も授業も一人でやり、指導教官は教室に来なくなりました…。
教育実習生、天職に出会う。
そうそう一度だけ指導されたことがありました。
「帰りの会とかつまんないから、さっさと部活行こうぜ。掃除もなしでいいや」
6限終わりと同時に下校させました。
指導教官の先生は来ないので、やりたい放題です。
それで、指導されました。
「くればやしくん、一応帰りの会と掃除はやってくれる?」
そのとき、僕は思いました。
(なら、お前も来いや!)
でも、優等生だった僕は、そんな汚い言葉は使いません。
とっても真面目な学生です。
教育実習の評価は満点でしたから。
これも、もう一回書いておきます。
満点でした。
ちなみに、授業はヒドいもので、板書はすべてイラスト(⁉︎)でした。
ですが、教室を成立させられる数少ない先生だったため、授業については何も指導されませんでした…。
というか、研究授業以外、ずっと一人でした…。
男子は全員腰パン&シャツ出し、無駄に短いスカートと無駄にダブついたルーズソックスの女の子しかいないファンキーな高校でした。
ですが、僕にとっては天国のような学校でした。
「もう私には先生なんて無理!」
「そんなことないよ〜」
というあたたかいドラマが展開される実習生控え室で一人、「学校の先生ってむちゃくちゃおもしろいなぁ」と思っている僕がいました。
「学校の先生って、天国みたいな仕事だな〜」
単純な僕は、天職に出会った気がしました。
気がつけば、部活動の練習試合の引率を一人で行いました。
教育実習生が一人で練習試合の引率をする。
よくよく考えると、そうとうありえないことです。
教育は人だよ
で、実習を終えて1ヶ月ほどしたころでしょうか。
「ウチの高校、どうしたら立て直せるかな?」
教頭先生から相談されるというおかしな展開になりました。
答えは簡単です。
先生たちが本気じゃない。
本気で子どもたちと向き合ってない。
うまくいくわけないんだよね。
どうしたらいい?
方法論じゃないのです。
そこに気がつけない時点で、終わってます。
教育は「人」だから。
あのころの僕には、教育技術なんてカケラもなかった。
板書は全部イラストだし…。
でもね、もっと大事なものがあったのです。
そして、それは今も僕の中に変わらずにあるものです。
「目の前の子どもをハッピーにする」
ただそれだけ。
問い続けて問い続けて、出てきた答えはとってもシンプルでだったのです。
ハッピーな先生になるためのしつもん
目の前の子どもをハッピーにするためにできることは何ですか?