「好きを仕事に」ではなく「好きで仕事を」

卒業式間際、
寝る間を惜しんで動画を作った。
合唱祭前には、
夜遅くまでメッセージカードを作ったりもした。
修学旅行や野外学習の企画を考えるのも好きだった。
そんなときは時間を忘れて没頭した。
教材研究も好きだった。
教材を読み込んで、
「どんな授業をしようかな?」と
妄想に励む。
そこから、授業の形を作っていく。
それが面白かった。
勤務時間が長い企業をブラック企業と呼ぶ。
だが、勤務時間が長いことが必ずしも悪だとは思わない。
今日はそんな話をしよう。
僕にはやりたくない仕事もあった。
「去年と同じ」が嫌いな僕は、
ことごとく去年の資料と差し替えた。
反省点を洗い出し、
すべて改善していく。
当然、昨年とは「やり方」が変わる。
すると、管理職からいちいち説明を求められた。
内容を理解するために説明を求められるわけではなく、
変化を阻止するために説明を求められる感じ。
とても面倒臭いな…と思った。
この「反対に意見に説明をする」のが、本当に嫌だった。
まあ、向こうから見れば、いちいち変化を求める僕の方が面倒臭い存在だったんだろうなって思うけど。
あとは、訳のわからない資料作りに、アンケートの記入。
やる価値の見えない仕事がとにかく嫌いだった。
組織で働く以上、「好きを仕事にする」というのは、なかなか難しい。
割り当てられた仕事を黙々とこなすしかない。
生徒会や特別活動をやりたかったけれど、僕に回ってくるのは「生徒指導」ばかりだった。
僕のクリエイティビティを発揮できる場所は、教室や学年しかなかった。
けれど、それはそれで幸せで。
僕は僕の教室で、思う存分その力を発揮した。
結局僕は、好きで仕事をしていたのだと思う。
「好きを仕事に」できなくても、「好きで仕事を」していれば、それは幸せなことなんじゃないかと思う。
やたら長時間労働が問題視されるけれど、問題の本質はそこではないと思うのだ。
心から好きで仕事をしているとき、僕らは時間を忘れて没頭する。
今、目が覚めてから寝るまでずっと働いている。
常にスマホかパソコンに触れている。
だからと言って、自分の働き方がブラックだとは思わない。
今は子育て講座をしたり、ビジネス構築のお手伝いをしたり、動画の撮影や編集をしたり。
それからカレンダーの販売をして、ブログやメルマガを書いて。
とにかくずっと働いている。
一見何もしていないように見えるときも、脳みそは常にアクティブな状態で、ビジネスを考え続けている。
それら一つひとつの仕事は、別に「好きを仕事に」しているとは思わない。
取り立てて「好き」というわけではなく、頼まれたからやっていることの方が多い。
だから思うのは、「好きを仕事に」する必要は必ずしもないということだ。
けれど、忘れないでほしい。
僕は好きで仕事をしている。
やりたいからやっている。
ほとんどの仕事は頼まれごとではあるけれど、やりたくなければやらない。
お金がいくらもらえるかは、僕にとってあまり重要ではない。
やりたいか、やりたくないか。
ただ、それだけなのだ。
船越耕太くんが、トイレ掃除をずっと続けてきたという。
彼は「トイレ掃除」をやらされてきたわけではない。
自分がやりたくてやったのだ。
これがすごく大事。
僕がブログやメルマガを書き続けたのだって、儲かるからやったわけじゃない。
「ブログを書いた方がビジネスに有利」と説くコンサルタントは多いけど、正直どうでもいいよな…って思う。
僕はただ、書きたかったから書き続けたのだ。
だから、苦痛でもなんでもなかった。
チャイムが鳴るたび、ため息をついて教室に向かう先生がいた。
そんなに嫌なら、他の職業を選べばいいのになって思った。
自分自身にとっても、そんな先生の授業を受けなきゃいけない子どもにとっても不幸だと思う。
お金がブロックになって、職業選択の自由を失っている人は多い。
心と身体も削ってまで働くことはないと僕は思っている。
僕自身、他の教員の尻拭いみたいな仕事が増えて働くことが嫌になった時期があった。
一生懸命がんばっているのに保護者に理解されない先生のフォローをすることは、まるで苦しくなかった。
だが、明らかに教員側の落ち度があって、それでもきちんと謝罪することができず、それをフォローしなきゃいけないとき、僕は自分の仕事に虚しさを覚えた。
目の前の子どもを幸せにするために僕は「学校の先生」をしていた。
だから、子どものためなのか、学校の体裁のためなのか、よくわからない仕事が増えたとき、「僕がこの場所でできることはもうないな…」と悟ったのだ。
自分の仕事に価値を見い出せると、人は「好きで仕事を」できると思う。
価値を見い出せない仕事をやらされ感満載でやるとき、人の心は蝕まれていくと思う。
その仕事は誰にどんな価値を届けているだろう?
そこに喜びを感じられなくなったならば、別の働き方や仕事を探してみるのも良いかもしれない。
魔法の質問
あなたはどんな価値を届けていますか?
