教育のパラダイムシフト

事実は何ですか?

僕らが上海で暮らしているとき、

反日デモが起こった。

 

 

テレビをつけると、

わけ知り顔のコメンテーターが、

中国という国の怖さを語っていた。

 

 

テレビの画面には、

繰り返し繰り返し、

デモの様子が映し出されていた。

 

 

暴徒と化した人たちが日系スーパーに雪崩れ込む。

燃やされる日本車。

 

 

同じ場面を何度も何度も。

上海で暮らす僕らも、

なんだか怖いなと思った。

 

 

結果、日本人学校の運動会は中止になった。

 

 

だが、僕らが暮らす町はいつも通りだったし、

いつも顔を合わす中国人は、

みんな優しかった。

 

 

あるとき、タクシーに乗っていたら、

運転手さんに話しかけられた。

 

 

なんとなく、

日本と中国の関係を話していることがわかった。

 

 

僕の中国語能力では、

運転手さんの話していることは、

完璧にはわからなかった。

 

 

 

ただ、

そんなニュースばかりを見てきたから、

ちょっとだけハラハラした。

 

 

後部座席には、

妻と子どもたちが乗っている。

 

 

無用なトラブルは避けたかった。

 

 

それで、僕はこんなことを伝えた。

「僕は中国も日本も好きだよ」

 

 

すると、彼はこう言った。

「中国とか日本とか、関係ないよな。

同じ人間だよ」

 

 

そういうと、ニコリと笑った。

 

 

思うに、

日本の報道は発信する者の意図を含んでいる。

 

それを良い悪いとジャッジするつもりはない。

すべての発信には、意図が含まれていることを忘れてはならない。

 

 

たとえドキュメンタリーであっても、

作り手の意図があるのだ。

 

 

すべては作り手の意図で切り取り、

表現されているわけで。

 

 

僕らが大切にしたいのは、

そこから事実をすくい取り、

「では、その事実について自分はどう考えるのか」

をきちんと問うことである。

 

 

 

これまでの教育は、

記憶することに特化していた。

 

 

「知っているか、知らないか」を問う。

そんな学習が多かった。

 

 

評価をしなければならない以上、

「○」か「×」とハッキリしている方が

都合がいいだろう。

 

 

「点数さえ取れればいい」と、

記憶や「解き方」に特化した学習は

「これまでの時代」には正解だった。

 

 

だが、「これからの時代」に必要な力は、

すでに変化している。

 

 

漢字は「書く」時代から「選ぶ」時代に変わっている。

知識は「調べる」時代から「検索する」時代に変わっている。

 

 

学校だけでなく、

教育観や人生観も、

現代的にシフトする必要がある。

 

 

問いを見つける力。

すべてはそこから始まる。

 

創造的な人生を生きるためのしつもん

 事実はなんですか?

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。