子どもの力を最大限に引き出す方法

どんな環境であれば力が発揮できますか?

悪い遺伝子、良い遺伝子

遺伝学の話をしようと思います。

問題があるとされる遺伝子も、状況さえ異なれば素晴らしい遺伝子になりうるというお話です。

 

 

大多数の人は、正常なドーパミン受容体遺伝子DRD4を持ちます。

しかし、突然変異種であるDRD4-7Rを持つ人もいます。

この遺伝子は、ADHD、アルコール依存症、暴力性と関係がある悪い遺伝子とされています。

 

 

社会心理学者のアリエル・クナフォさんは、3歳の子どもたちにお菓子を渡し、DRD4とDRD4-7R、どちらの遺伝子の子どもたちがお菓子を分け与えるか、実験をしたそうです。

 

 

その結果、お菓子を分け与えたのは、悪い遺伝子とされた7Rを持った子どもたちだったのです。

 

 

実は、7Rを持つ子どもたちは、虐待など過酷な環境で育つと、アルコール依存症などになりやすいそうなのです。

一方、良い環境で育った7R遺伝子の子どもたちは、通常のDRD4を持った子どもたちよりも親切になったのです。

 

 

同じ遺伝子でも、状況次第でその特性を変えるということでした。

 

 

別の例を挙げましょう。

CHRM2遺伝子を持つ子どもは、粗悪な環境で育つと非行に走りやすいのですが、良い環境で育つと優秀な成績を残すようになるのだとか。

 

5-HTTLPRという変異体遺伝子を持つ子が支配的な親に育てられるとズルをしやすくなり、優しい親に育てられると従順な子に育つのだそうです。

 

 

通常とは異なる遺伝子を持つ子どもたちは、繊細で傷つきやすい遺伝子なのだとか。

つまり、環境から影響を受けやすい遺伝子であることがわかります。

 

 

どこで花を咲かせるか

ある男性の話をしましょう。

 

 

193㎝のがっしりした身体。

しかし、胴が異常に長く、足は短い。

両手両足は異様に大きい。

両手を広げると普通の人は身長と変わらないのに、彼は2Mを超えたのでした。

 

 

そのようなバランスの悪い体躯ですから、うまく踊ることができず、走るのも苦手でした。

彼が機敏に動くことができたのは、水の中だけでした。

 

 

彼の名は、マイケル・フェルペス。

オリンピックにおいて金メダルを23個獲得した怪物です。

 

 

では、なぜ彼が金メダルを23個も獲得できたのでしょうか。

それは、勝負する場所として「水の中」を選んだから。

 

 

私たちは、それぞれに開花しやすい環境が存在するのです。

 

 

自身の初期設定を受け入れる

自分を改善していくことは、とても大切です。

しかし、私たちの根本的な個性は、それほど変化しないことが研究でも示されています。

 

 

世界で最も影響力のある思想家ピーター・ドラッガーは、「自分が望むことを人生で成し遂げるためには、何より自分を知ることが大切だ」と述べています。

 

 

一見、なんでもできてしまうような羨ましいあの人も、実は「自分の強み」を心得ていて、それに合うものを選んでいるだけだというのです。

 

 

さて、成功ばかりして来た人間の中には、1つの挫折で2度と立ち上がることのできない者もいます。

「自分の能力が高いために成功して来た」と勘違いをしている者です。

 

 

実は、その成功は、その環境下で成功する要素をたまたま自分の性質が満たしていただけかもしれないからです。

野球選手で大成した選手が、実業家としても成功する例が稀有なこともその1つでしょうか。

 

【参考文献】

エリック・パーカー著『残酷すぎる成功法則』(飛鳥新書)

 

 

 

子どもの力を伸ばすために必要なこと

ヒマワリの種を蒔けば、ヒマワリが咲きます。

チューリップの種を蒔けば、チューリップが咲きます。

 

 

ヒマワリとチューリップを比べるのは、愚かなことです。

どちらが良いとか悪いとか、そういうことはありません。

 

 

人間だって同じです。

他人と同じである必要はありませんし、他人と比べる必要もありません。

 

 

人間は個性の塊です。

とりわけ、子どもは可能性の宝庫です。

 

 

その子にあった環境を用意してあげることが大切です。

 

 

嫌々学習塾に通う子どもたちを何人も見てきました。

そもそも勉強が好きでも得意でもなく。

ただただ毎日、「行かねばならぬ」と学習塾に行く子どもたちです。

 

 

塾の宿題に追われ、学校の課題に追われ。

もちろん成績という名の「結果」にも反映されません。

 

 

それでも親は「やればできる」と信じています。

成績が伸びないのは、「本人のやる気の問題」と信じています。

 

 

でも、本当はそうではないのです。

 

 

この子の力が一番発揮されるフィールドはどこか。

フェルペスにとっての「水中」のように、「勉強が好き」という子どもは存在します。

 

 

ある年のこと。

「見れば覚わる」という子がいました。

「見れば忘れないのに、テスト勉強をする意味がわかりません」と言う子どもです。

 

 

天才とは悲しいものです。

「どうせ1位だから、つまらない…」

そんなことを嫌味ではなく本気で言うのです。

 

 

一方で、漢字がどうしても覚えられない子どももいました。

若かりし頃の僕は、「10回書いてダメなら20回。20回書いてダメなら30回。覚えるまで何度でも書くんだ」と指導したこともありました。

 

 

その結果、50回以上書いて、1個の漢字を覚えたのです。

(そこまでして覚えなくてもいいかな?)と正直思いました。

 

 

そのエネルギーを、本人の得意ジャンルで生かした方がいい。

心からそう思いました。

 

 

ただ、学校には限界があります。

 

 

それぞれの個性を伸長させてあげることが理想です。

先生たちだって、そうありたいと願っています。

 

 

しかし、現状では「個に応じる」にも限界があります。

 

 

ですから、そこに、親としてどんな環境を用意してあげられるか。

それが問われているのだと思います。

 

 

学校を批判するのは簡単です。

でも、本当に大切なことは、「じゃあ、その不足分のために、あなたにできることは何か?」ということなのです。

 

 

 

基礎基本を身につけさせるのが学校です。

プラスαは家庭で。

そういう時代が来ているのだと思います。

 

 

 

子育てに迷ったときに出会いたい100のしつもん

どんな環境であれば、力が発揮できますか?

 

くればやし ひろあき

公立中の先生を16年間勤めて独立。おもに生徒指導に携わってきた思春期の子どもの専門家。その経験を生かし、受講者600人超のワークショップ『子どもとつながるリレーションシップ講座』を全国で開催。

9月1日は統計上子どもの自殺が最も多い日であるということを知り、2016年クラウドファンディングを成功させ県内8会場映画上映ツアーを敢行。2017年、刈谷市の自殺対策計画策定委員を務める。

2017年には児童虐待に着目し、「子育て万博2018inあいち」を主催、「子どもとつながるしつもんカレンダー」をリリースした。

また、「幸せなお母さんが増えることが幸せな子どもたちにつながる」と考え、お母さんのための学校『passion life college』を妻とともに主宰。現在は3期目、カレッジ生は30名いる。

3児の父でもある。