アメフトのニュースが気づかせてくれること
アフター過ぎファール
「○○、お前ボランチだから、中盤で相手での10番、潰すのが仕事だぞ」
「センターバックのところで、相手のポストプレーヤーに厳しくいって潰さないと、起点作られるからな」
そのぐらい、僕も言ってたなぁ…って思い出す。
「怪我させろ」って意味じゃなく、使うこともあるんだよなぁ。
ネットの空気は「潰す」ってのはイコール「怪我させる」みたいだけど。
んでさ、その言葉を聞いて、レフリーが笛を鳴らしたあと、思いっきり遅れてアフターで後ろからスライディングタックルしちゃったら、「おいっ!」ってなるよなぁ…。
若い頃は僕もプレーヤーだった。
試合中、カチンときて、削りにいくこともあるんだよなぁ。
わざとと言えばわざとだし、感情的になって…みたいなことね。
でも、もう少しうまくやるんだよね。
うまくやる?
ちょっとニュアンスが違うな。
流れの中でファールになっちゃう…みたいな感じね。
Jリーグとかでも、そんなプレーってあると思うの。
バチバチやりあってて、最後突き飛ばしてしてカードもらっちゃうみたいなシーンね。
なんか、あんなに遅れてファールに行くことが不思議なんだよなぁ。
野球でもホームベースでキャッチャーに体当たりすることがあったよね。
でもさ、キャッチャーがピッチャーにボールを返すときに、近くにいるバッターの顔面目がけてぶつけるとかはしないじゃん?
なんていうか、一連のプレーの中での反則とか報復とか、スポーツの世界ってあると思うのよ。
プロ野球でも報復でデッドボールして、審判が試合自体に警告を与えること、あるじゃん?
そりゃスポーツマンシップには外れるけれど、対人スポーツって、熱くなってやり過ぎちゃう的な部分ってあるのよ。
指導者としては、「ハートは熱く、頭は冷静に」って選手に伝えるんだけどね。
「エキサイトする」って感じ、どのプロスポーツ見てたってあるじゃん?
だから、僕は今回のアメフトの事件ってすごく違和感あるんだよね。
あれだけ遅れてファールに行く姿に。
流れが切れた後の出来事だよね。
すごく不思議なプレーだったなぁ。
「伝えたいこと」と「伝わること」は違う
全然話は変わるんだけど。
昔、こんなことがあったの。
授業の中でも2人組で話をするって場面があったのね。
1人がひたすら話し、1人はひたすら聞く。
そんなワークね。
僕は「相手の人が喜ぶように聞いてあげよう」って指示を出したの。
そしたらね、ひとりの生徒がずっとにらめっこのような顔で話を聞くの。
最初、ふざけてるのかな?と思ったんだけど、そうじゃなかったのね。
「喜ぶように」って言葉を聞いて、「相手が笑っている」イコール「喜んでいる」と認識していたのね、その子。
だから、真剣にその子は「にらめっこ」の顔をしていたの。
(あー、指示を間違えたな)って思ったよ。
その子は、人の表情から相手の気持ちを読み取ることが苦手な子だったのね。
だから、「喜んでいる状態」がまずわからないわけ。
それでも、相手が笑ってくれるときは、きっと「うれしい状態」だろうと認識したの。
この場合、「感じ取る」ってよりは「方程式に当てはめる」って感じね。
「泣いてる」イコール「悲しい」みたいな感じ。
結婚式でうれし泣きしている新婦を見て「あの人、そんなに結婚したくないのかー」って思う感じね。
で、一生懸命話している子に向かって、白目向いたり、舌を出したりしたの。
だから、僕は自分の言葉を変えたわけ。
「『あなたの話を聞いてるよ』ってことが相手に伝わるように、うなづいたり、声をかけたりしてみようね」と言い換えたの。
そしたら、その子、変わったよね。
決してふざけてるわけじゃないことを、クラスの子たちもわかっていたから、それでトラブルになることはなかったけどね。
伝えたいことを、相手に伝わるように伝えるのって、簡単ではないよね。
「潰せ」とは言ったけど、そういうこと意味じゃないのよ!ってのもあると思うんだよなぁ。
どちらが悪いか?
どんな指示があったか?
世間はやたら白黒つけたがる。
言った言わないって、必ず揉めるポイントだね。
言った言葉と伝わった言葉が異なるなんてことはよくあるのね。
監督さんをかばうわけでも、選手をかばうわけでもなくさ。
そういうことって、あるよなぁ…って思うわけ。
どちらかが嘘をついているって考えがちだけど、どちらも本当のことを言っていることだってあると思うの。
ただ、ニュアンスが違っていたり、言葉足らずだったり、理解が異なっていたり。
あるよな…、そういうこと。
どちらかが嘘をついているとは限らない
つまりさ、事実なんてよくわからないわけよ。
それはもう、大相撲の暴力しかり、芸能人や政治家の不倫問題しかり、アメフト反則問題しかり。
んで、それを白黒つけたがるじゃん?
よくわからないまま、勝手な想像力でストーリーを作り、それに当てはめるでしょ?
自分たちが決めたストーリーでなければ「嘘」と断定する構図なんだよね。
「白鵬は悪いヤツ」という前提で話が進んでた大相撲の問題。
一晩一緒にいたら「やっちゃうでしょ♡」が前提で進んだ不倫問題。
「監督は悪いヤツ」という前提で話が進んだアメフトの問題。
もう、すでにストーリーが出来上がってるんだもん。
怖いよね。
「事実を明らかにする」とか言うけど、結局余計に事実がわからなくなるんだな。
インドの寓話である「6人の盲目と象」の話を思い出すよね。
6人の盲目の人が象を話していたんだって。
体を触った人は「壁みたい!」と言う。
鼻を触った人は「大きなミミズ!」と言う。
耳を触った人は「うちわみたい!」と言う。
足を触った人は「木の幹みたい!」と言う。
牙を触った人は「槍みたい!」と言う。
尾を触った人は「ロープみたい!」と言う。
みんな自分の意見を譲らず、喧嘩になったんだそうな。
僕らは常に世界の一部に触れているに過ぎない。
触れている部分だけでは全体がわからない。
そういうことってあると思うよ。
選手も監督も本人たちは本人たちが触れている部分(理解している部分)の話をしているだけなんじゃないかな。
我が子だったら…
我が子だったら…ってのを考えるよね。
でもさ〜、考えれば考えるほど、こんなに大事(おおごと)に僕はしたくないなぁって思っちゃう。
相手の人生もあるしさ。
ウチの子の人生もある。
あの子のお母さんはどう感じているんだろう?
お父さんは白黒つけたいみたい。
でもさ、お母さんはどうなんだろうね。
僕は白黒つけるよりも、早くこの喧騒が冷めて、子どもを元の生活に戻してあげたいなぁって思うだろうな。
そりゃ腹は立つよ。
腹は立つけど、自分の子が一番大事じゃん。
幸い怪我もそこまで重くなかったわけだし、できればさっさと大好きなスポーツに集中できる環境を作ってあげたいよ。
親心って、どうなんだろう?
そっちに振れないのかな?
わかるんだ、腹は立つよ。
親としては腹が立つ気持ちはわかるんだ。
でも、それ以上に、「我が子の周りを静かにさせたい」が上回る気がするんだよ。
よくわからない人たちがヤンヤヤンヤ言って、正義の拳を振りかざす。
絶対的に安全な場所から、なんの権利があってか、他人を削りにいく。
犯罪者でもないのに、名前を晒し、顔を晒し、徹底的に潰す。
法治国家でありながら、ネット上では私刑が行われる。
疑わしきは悪であり、豊かな想像力で築き上げたストーリーに当てはめていく。
裁く権利などない人たちが人を裁く。
この空気感って怖いよな…って思う。
もとは大学生のスポーツの試合のプレー中の出来事。
それが、こんな大事件になる。
怖いよ。
でも、あれだな。
記者会見開いて、「子どもに静かな環境を作ってあげたいから、もう追いかけ回さないでください。示談が成立しました」とか言ったら、また叩かれるんだろうな。
「あの父親は、金に目が眩んだ」とか、「子どもを見捨てた」とかさ、あることないこと書かれるんだろうな。
ネット、怖いわ、ホント。
正義って怖いよ。
ニュースを見て心がザワついたら、自分の心と向き合うチャンスだな。
自分を知るチャンスだなぁ。