ある先生の行動に見えた「いじめっ子」の心理

ロングイェールビエンで登山

先日、ある中学校で講演会をしました。

それは、保護者と先生方が参加する、100人規模の講演会でした。

 

 

実は、とても気になったことがあったのです。

でも、このことは書くまいと思っていました。

 

 

参加者の皆様のアンケートが学校から届きました。

複数の方が「あること」を指摘してくださいました。

そこで「書くまい」とは思っていたけれど、せっかくなので書いてみようと思います。

 

 

実は、その講演会、最前列の中央に男性教師が一列陣取りました。

100人規模の講演会です。

その最前列です。

ありがたいことだなぁ…と思いました。

 

 

そして、僕の講演は始まりました。

僕の中で決めていたことがあります。

それは「学校の先生の応援になる講演をしよう」ということです。

 

 

「学校批判」などいくらでもできます。

でも、そういうの、嫌いです。

僕はいつだって「愛」の人でありたい。

がんばってる先生の応援になればいい。

そう思ってマイクを取ったんですね。

 

 

話そうとした瞬間、僕は目を疑いました。

最前列の先生たちが全員腕を組んで寝ているのです。

 

 

そのとき、僕が感じたこと。

それは「怒り」でしょうか?

 

 

いえいえ、違います。

僕が感じたのは悲しみです。

 

 

僕が最初に感じたのは「プロ意識」の欠如です。

それを残念に思いました。

教師としての甘さを感じました。

 

 

保護者が見ている前です。

そして、申し訳ないですが、僕は割と良い話をします(笑)

涙を流してくださる保護者もいます。

本当に申し訳ないのですが、そこらへんのつまんね〜〜大学教授のありがたいお話の百万倍ぐらいは良い話をします♡

 

 

で、そういう話をしている講師の目の前で、しかも最前列で「寝る」のです。

 

 

わかるんだ、気持ちはわかるんだ。

聞きたくないよね。

教育畑を飛び出した元「教師」の話なんて聞きたくないよね。

その表現技法が「最前列で寝る」だとしたら、あまりにも幼いよ。

 

 

残念だけど、荒れた学校ではそういう教師は一人もいない。

だから、僕には「甘え」に映ったんだな。

 

 

準備したPTAの皆さんの気持ち。

話を聞いている保護者の気持ち。

そういう気持ちを組めないのは、「甘え」なんだよ。

 

 

 

学校に不満を持っている保護者だって確実にいる。

僕ならば若い先生を捕まえてこう言う。

「とにかく一生懸命話を聞きなさい。そして、講演が終わったら感動している保護者を捕まえて、対話をしなさい」と。

すべてをチャンスに換えようとする。

「荒れた学校」で戦ってる先生なら当たり前のように動くことだ。

 

 

そうやって、プロの教師は保護者との関係性を築いていくんだよ。

がんばって学校教育を応援してくれているPTAのお父さんお母さんを応援するんだよ。

 

 

そういった一つひとつが子どもとの関係性につながる。

それがプロの仕事だよ。

 

 

だからね、「あ〜、この学校は落ち着いた良い学校なんだな」って思ったの。

そういう「甘え」が教師に許される学校なんだな…ってね。

 

 

僕はそんな姿に「怒り」なんて感じないよ。

ただただ残念だなぁ…って思ったの。

 

 

眠りたいなら、隅や後ろの目立たない席で眠れば良いじゃない?

疲れてるの、わかるもん。

良いよ、別に。

寝ていいんだよ。

 

 

ただね、なぜ、ど真ん中の最前列で寝るの?って思った。

これがこの話のポイントなの。

しかもだよ。

講演が始まるまでおしゃべりしてたのに、話し始めたら寝るんだよ。

ちょっとウケるよね、って思った。

 

 

あぁ、そうか。

これって、「いじめっ子の感性」に近いかもしれない。

完全なる拒否。

ある意味、嫌がらせだよね。

 

 

「共感力のなさ」とも言えるかな。

そのくせ、生徒が寝てたら叱るんでしょ?

そりゃさ、生徒は先生のこと、信頼しないよね。

 

 

ただ、こちとら、あらゆる環境で授業をしてきたプロ中のプロなんだよね。

後ろのロッカーの上にRookiesみたいにやんちゃ坊主が勢揃いした状態で授業をしたこともある。

板書してたら背後から殴られたり。

百人一首してたら廊下から助走をつけた女子生徒が飛び蹴りしてきたり(笑)

 

 

言っとくけど、キャリアが違うからさ。

海外日本人学校では、教育委員会も児童相談所も警察もない状況で、修羅場くぐっても来てますし。

 

 

「校長出せ!」って怒鳴り込んでくる保護者と対峙するとかね、よくあることだし。

カタギじゃないお宅に家庭訪問とかね。

ええ、正直、キャリアが違います。

 

 

だからね、目の前で寝てようが別にそれはいいんだよ。

気にならない。

やっぱ残念だよな。

「学校の先生」を応援しようと思って講演内容を組み立てたのに、目の前で嫌がらせのように眠るんだもん。

 

 

もう一度、書いておくよ。

最前列の中央で、話し始めた途端、揃いも揃って寝るんだよ。

やっぱ、残念だよ。

こんなこと書きたくなかったけどさ、保護者アンケートにいっぱい書かれてるから伝えておくね。

 

 

まず、「感謝の気持ち」を持った方がいい。

この場を作ってくださったPTAの皆様への感謝だよ。

その感謝をちゃんと表現できる大人になろう。

 

 

生徒にも言うでしょう?

卒業間際にあなた、言うでしょう?

「感謝しなさい!」って。

僕になんて感謝しなくていいから、PTAのお母さんたちには感謝しなさいよ。

 

 

あの人たち、無償で学校教育のために一肌脱いでくれてんだよ。

そこは感謝だよな。

 

 

あと、教師は常に見られる職業なの。

しかも、最近はあまり良い目では見られないの。

だから、保護者がいる前では人一倍気を遣おうぜ。

 

 

そして、あなた一人の行動が「ほら、あの中学校の先生たちは…」という評価につながる。

自分さえ良ければ、という考え方はダメ。

教育現場はチームプレーだから。

もう子どもじゃないんだから、プロ意識を持とう。

そうだよ、子どもじゃね〜〜んだって。

 

 

でも、やっぱ、そんなことよりも「先頭のど真ん中で講演スタートと同時に寝る」ってのは、心のグラスの満たされなさ、なんだよな。

 

 

たとえば教室でさ、クラスのお友達がスピーチの発表をするとするじゃない。

そしたらさ、先頭の子たちが一斉に寝るのよ。

まあ、たぶん、これ「いじめ」の種だよね。

先生たち、指導すると思うんだよね。

 

 

でもね、こういうとき、その子たちを責めたらダメなの。

プロ教師はさ、ここで話を聞いてあげるわけ。

その鬱屈した心を紐解いてあげるのが大事なんだわ。

じゃないと、教室はうまく回っていかないんだよね。

 

 

まあ、つまり今回起きたことも同じだよ。

だからね、もしも僕のブログを読んだ保護者様、間違っても学校に苦情の電話など入れないでくださいね。

「叱る」や「責める」じゃ何も解決しないの。

 

 

それよりも、そういう先生たちを労ってあげてね。

いつもがんばってるねってさ。

それが巡り巡って、子どもたちの幸せにつながると思うんだ。

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。