目に見えないものを見つめたら、この世界は優しくなれる。


僕らは目に見えるもの、耳に聞こえるものだけを信じてしまう。

だが、人間関係を築くうえで大切なことは、目に見えないもの、耳に聞こえないものなのではないか。

 

 

樹木だけを見ていては、大切な根っこに気がつかないように。

大海原に浮かぶ氷山を見ていては、その下に眠るさらに大きな氷の塊に気がつかないように。

 

 

見えない部分に目を向ける。

これが大切なのだ。

 

 

以前、僕のクラスに暴れん坊の男の子がいた。

ボンタンに短ラン。

金髪。

目が合えば殴りかかる。

声をかければ悪態をつく。

 

 

そんな男の子だった。

 

 

 

学校に来れば、校門で追い返される。

「そんな服装じゃダメだ」と言われ、

「お前なんて来るな」と言われ、

不良少年のレッテルを貼られていた。

 

 

学校に来ては暴れる。

そんなことを繰り返す彼に、僕は疲れ果てていた。

 

 

それで暴れる彼に

「お前、いい加減にしろよ!」

と怒鳴りつけた。

 

 

そのとき、彼が一瞬寂しげな表情を見せたことを僕は忘れない。

そして、こう叫んだのだ。

 

 

「お前も俺に来てほしくないんだろ!」

 

 

僕はその瞬間、とても後悔した。

そうか、この子の言動はすべて「僕を愛して」だったのだ。

 

 

他と異なる服装も、他と異なる髪型も、他と異なる言動も。 

すべては、愛されたいがゆえの、いびつな自己表現だったのだ。

 

 

ボンタンも金髪も悪態も、目に見える世界である。

僕らはそれを見て、「この子は不良だ」とジャッジする。

 

 

だが、その根っこにあるものは何かに目を向けてみると、まったく異なる世界が見えてくる。

 

 

子どもだけではない。

夫婦も同じ。

職場も同じ。

ぜんぶ、同じなのだろう。

 

 

僕らは表現者である。

だが、表現下手でもある。

 

 

だから、地表に見えている樹木だけでなく、その下に隠れた根っこを眺められたら、この世界はもっと温かくなるんだろうなぁ。

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。