受け取れない


そうやって活動を続けると、いろいろなところから感謝や賞賛の言葉をいただくようになります。

 

 

『子育て万博』では、シンガーソングライターの岡谷柚奈さんに『ありがとう』というテーマソングを作っていただきました。パッケージデザインは、ロイズのチョコレートのパッケージデザインなどを手がけるデザイナーのhicoさんです。

 

 

その曲を作っていただくと、たくさんの方から感謝の言葉をいただきました。

 

 

「素敵な曲を作っていただいてありがとうございます」

 

 

僕は感謝されることに違和感を感じました。

 

(僕が作ったわけじゃない。この歌は柚奈ちゃんの歌だし、パッケージを作ってくれたのはhicomさんだし、僕は何もしていない!)

 

そう思いました。

 

 「全国で講座や講演をしているなんてスゴいね」

 「いつも満員御礼だね」

 「子育て万博、すごいね」

 

 いろんなところで賞賛されるたび、

「そんなことないです。みんなのおかげです」

と答えていました。

 

 

「みんなのおかげです」は本心です。心からの感謝です。でも、僕は必ず枕詞に「そんなことないです」をつけていました。

 

どれだけ賞賛されても「そんなことないです」と全否定。相手の言葉を受け取り拒否していたのです。

 

 

ある朝、僕は震えが止まらなくなりました。その日の前日、真理ちゃんが僕にそのことを指摘してくれました。彼女は僕にとって先生のような存在で、いつも気づきを与えてくれる女性です。

 

 「くれさんって、絶対受け取らないですよね」

 

そう言われて、僕はハッとしました。

無意識なんです。賞賛されるたび、僕は無意識に「そんなことないです」と答えていたのでした。

 

 

心の奥底で「愛されたい」と願っていながら、僕はさらに奥底で、「愛される価値なんてない」と思っていたのです。

一番大事な自分という存在の価値を最も認めていなかったのは、他ならぬ自分自身だったのです。

 

 

先日、こんな女性に出会いました。彼女は看護師さんでした。勉強熱心で、看護の勉強だけでなく患者さんを癒すため、アロマの勉強もされていると言います。

 「それはすごいですね」

心からそう思いました。そして、そのことを彼女に伝えたのですが、返ってきた言葉は、

「そんなことないです」

だったのです。

 

 

(あぁ、これが以前の僕の姿か…)と思いました。他者はいつだって鏡のように、自分に気づきを与えてくれます。

 

 

彼女はただの看護師さんではありませんでした。聞けば、「認定看護師」と呼ばれる、全国でも数少ない看護師さんだったのです。

 

 

その話を聞いて、

「そんな珍しい資格をお持ちなんですね」

と伝えると、うれしそうにうなづき「そうなんです」と応えてくれました。

 

 

それで僕はまた、

「それはすごいですね」

と声をかけたのですが、彼女は一瞬で顔を曇らせ、

「そんなことないです」

と言うのです。

 

 

僕は思わず、

「自分が言葉を受け取れていないことに気づいてる?」

と尋ねました。

 

どうやら彼女もまた無意識に言葉を受け取り拒否している一人だったのです。

 

 

僕は毎日、たくさんの女性とお話をしています。そのほとんどが既婚女性です。お話をしている中で、本当に多くの「そんなことないです」に出会います。

僕らは誰もが愛されたい。けれど、奥底では自分自身は愛される価値がないと思っている。そんな女性にたくさん出会ってきたのです。

 

 

前の記事はこちら→本当は愛されたい自分

続きの記事はこちら→心が不感症

 

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」として人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・2018年~2019年 100人のボランティアスタッフをマネジメントして『子育て万博』を主催。

・2021年~2024年 パリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフのマネジメントを担当。

・経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムCrewDocks®︎を開発。企業研修など精力的に活動中。