いじめる子は弱い子だから、厳しいだけの指導では「いじめ」は解決しないんだ。


いろんな人から「くれちゃんは優しすぎるよ」とよく言われる。

この場合、褒め言葉ではなく嗜められる言葉として。

早い話、「くれちゃんは甘いなぁ」なのである。

 

 

優しくしているつもりはないけれど。

相手の気持ちをついつい考えてしまうのである。

 

 

僕に嫌なことをしてくる人がいる。

何度も何度も嫌なことをしてくる。

それでも僕は、(そうしたくなる気持ちもわかるよ)となってしまう。

 

 

著名な先生からも「世間の厳しさを教えてあげなさい」と叱られたのだけど。

勇気がないわけではない。

僕の繊細すぎる感性が、相手の気持ちを慮ってしまうのである。 

 

 

嫌なことをしたくなる気持ちもわかるのだ。

嫉妬心や自尊感情の低さが、他者に対する「嫌がらせ」を引き起こす。

悔しいんだろうな、と思うけれど、その気持ちが素直に言えなくて、こんなことをするんだろう。

 

 

教育現場で「いじめ」をいくつも見てきた。

たしかに、「いじめられる子」というのは「いじめ」の引き金となる要素がある。

それは、例えば「太っている」とか「臭い」とか「どんくさい」とか「勉強ができない」とか「無駄に声が大きい」とか、とにかく多岐に渡る。

 

 

なんらかの「目につくフック」がある。

だから、いじめられっ子が悪いのか、というとそうではない。

 

 

そういう子がクラスにいたとしても、すべての子どもがそういう子をターゲットにするわけではない。

教室の中には「いじめる子」と「いじめない子」がいるのである。

忘れていけないのは、ほとんどの子は「いじめ」に加担しない。

 

 

ただ関わり合っては大変と、傍観者になってしまうことが多い。

それはそれで仕方がないことだと思っている。

だって、人間ってそういうところ、あるじゃん?

 

 

それで僕はいつも、「いじめる子」に興味をもつ。

もちろん「いじめられっ子」を守る。

けれど、それは本質的な問題解決にはつながらないことがほとんどだ。

 

 

なぜかというと、「いじめっ子」はターゲットを変えるか、やり方を変えるからである。

要するに、満たされない心を他者を傷つけることで埋め合わせようとしているのだ。

だから、その心を満たしてあげることからスタートする。

 

 

やったことは悪い。

でも、君は悪い人間ではない。

 

 

そんなところを出発点に、まずはその気持ちに寄り添ってやる。

たぶん世間の声から言えば、それは「いじめっ子」に対して、とても甘い対応なのである。

 

 

でも、そういう子どもたちに対して、ただ厳しいだけの指導をしても、第二、第三の被害者を生むだけだ。

だから、まずその子の気持ちに寄り添うことから始めたい。

 

 

なので、僕は僕に嫌なことをしてくる人を見ても、やはり「何が満たされないんだろう?」と考えてしまう。

 

 

昨日、とある地方選挙の開票速報をYouTubeで眺めていた。

どうやらそのYouTubeチャンネルが応援していた候補者が惜しくも落選したようだった。

 

 

すると、コメント欄に

「ザマアミロ」

「バンザイ!」

「おめでとう」

「やったー」

という言葉が並んだ。

 

 

僕はそういうコメントをして喜びを感じる人の心を思いやる。

たとえ立候補者が嫌いな人だったとしても、傷ついた者の傷口に塩を塗りつけて喜ぶような人間にはなりたくない。

いや、まともな情緒を持ち合わせていると、そういうことはできない。

 

心の中で思うのと、それを行動で示すのでは雲泥の差があるわけで。

真っ当に情緒が育っていれば、人の不幸を喜ぶ自分自身に嫌悪感を抱くのが普通である。 

 

 

だから、人の不幸を喜び、それをわざわざコメントする神経というのは、かなり歪んでいることがわかる。

昨今はいろんな嫌がらせがある。

ハラスメントというヤツだ。

 

 

人を傷つけることで喜びを感じる人は、やはり心が歪んでいる。

そういう人の心が癒されたらいいな、と思う。

僕はあたたかな社会をつくりたい。

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。