お母さんとお父さんに感謝できる子を育てる

親への感謝

育児放棄の現場から

ある男の子の物語です。



『入学式』

それはだれにとっても清々しい新たなスタートの日です。

しかし、その場にいることのできない子がいました。

 

その日の午後、担任の先生が訪ねていくと、扉が静かに開きました。

薄暗い部屋から一人の男の子が顔を出しました。

 

聞けば、「お母さんはお小遣いに1000円 を置いて、出ていってしまった」と言います。

いつからいないのか尋ねてもハッキリしません。

どうやら1ヶ月近く一人で過ごしてきたようなのです。

 

「たった1000円…」

食事はどうしていたのか、さらに尋ねました。

近所の仲間が差し入れてくれたものを食べてきたようなのです。

なぜ、そのような状態で保護されたなかったのか。

 

彼は、外国籍の子どもだったのです。

父親はわかりませんし、母親もちゃんとビザがあったのかさえわかりません。

ですから、そういった外国人のコミュニティーが助けてくれていたようなのです。

 

「制服がないから学校には行けない」と言います。

担任の先生は、卒業生に連絡を取り、中学生のときの制服を借りてきました。

その制服を渡し、彼は翌日、1日遅れで彼の学校生活は始まりました。

 

さらに、学校の先生や児童相談所の働きかけにより、児童養護施設に入ることもできました。

 

母国語をもたない子どもの言葉

日本でずっと暮らしていたのに日本語が上手に話せなかった彼は、先生たちの勧めもあり『日本語教室』に通い始めます。

 

しかし、その子には大きな問題がありました。

学校に行かせてもらえず、母親から声もかけてもらえなかった彼は、母国語を持っていなかったのです。

 

日本では、国籍を問わず、子どもたちは学校に通うことができます。

日本語がまったく話せない子も、公立中学校は受け入れます。

 

彼は、それでようやく言葉を覚えはじめたのでした。

ただし、それは彼が聞き取ることができた日本語のみ、それも小学生の使う限られた語彙を感覚で覚えていったのでした。

 

日本語教室の先生はおっしゃいました。

「何語であっても構わないけれど、語学の習得には母国語が必要です。しかし、彼には母国語がありません。たとえば『優しい』という言葉を教えたくても、その言葉に当たる母国語をもっていないため、言葉の意味が理解できません」とのことでした。

 

「悲しい」の意味は、悲しいことが起きたとき、それを「悲しいね」と言ってくれる人がいたから、わかるのです。

「愛」の意味は、愛されたことのない子には、わからないのです。

 

 

思春期の子どもたちに伝えたいこと

さて、話題を変えます。

 

子どもたちとの交換ノート。

その中に「お母さんに叱られてばかりだ。私の気持ちなんてちっともわかってくれない」 という記述をよく目にします。

 

「私の気持ちなんて」と考えることは思春期ではよくあることです。

思春期の子どもの中には「まだまだ子どもの自分」 と「大人になりたい自分」が同居しています。

保護者に「依存」した状態から、少しずつ「自立」していくのが 思春期です。

 

だから、その過程でお家の人とぶつかる。

それは、健全に成長している証です。

 

「まだまだ子どもの自分」に声をかけてくれるお母さんの言葉を「大人になりたい自分」が反発しているんですね。

 

でもね、忘れないでほしいの。

あなたが今、言葉を話すことができるのは、あなたにご両親がたくさんの言葉のシャワーをかけたからなんだ。

 

深い『愛』を受けてきたから『愛』の意味がわかるのです。

叱ってくれる人がいるだけありがたいことです。

 

そういうことを、きちんと発信していくことが大切です。

 

保護者を応援する。

応援するから応援していただけると、僕は考えています。

 

ハッピーな先生になるためのステップ

 保護者が感謝できる子を育てると、保護者に応援していただける。

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。