お母さんはバンパイア♪

話すたびに子どもの表情を曇らせる親

あれこれ言ったら、おもしろくねーよ。

どうして大人は、こんなに教えたがりなのだろう。

あるボードゲームをしていたときのことだ。

 

 

たくさんの家族で集まって、ボードゲームをしていた。

そのとき、僕のグループには一組の母子がいた。

 

 

女の子の発達段階を考えれば、少し難易度は高めのゲームだ。

けれど、その子はわからないなりに、一生懸命参加していた。

 

 

ところが、である。

一緒に参加していたお母さんが残念なのである。

 

 

指示をしてしまう。

アドバイスをしてしまう。

 

 

「これはこうなのよ」

「あれはああなのよ」

「こうしたら?」

「ああしたら?」

 

 

その口を開くたび、子どもの表情は曇っていった。

それはそうだ。

子どもは子どものペースで考えているのだ。

自分の知識や感性を最大限に発揮して参加しているのだ。

 

 

当然、時間はかかる。

大人と同じようになんてやれない。

それでも、一生懸命参加しようとしていたのだ。

 

 

 

それなのに…

 

「早くしなさい」

「そうじゃないでしょ」

「何やってるの?」

 

と、急かすし、叱る。

どんどん、どんどん、子どもの表情は曇っていく。

 

 

お母さんは、そのことに気がつけない人だった。

 

 

人間関係はエネルギーの交換で成り立っている。

僕は、いつも人のエネルギーの流れを読み取っている。

 

 

目の前の人が何を感じているか。

そこにフォーカスしている。

 

 

子どもの心がプラスのエネルギーで満たされているか。

それとも、マイナスでエネルギーにあふれているか。

そんなものを感じながら、子どもたちと接してきた。

 

 

だから、わかるのだ。

 

 

大人が口を開くと、子どものエネルギー値が下がる。

エネルギーを交換しながら、僕らの人間関係は成り立っている。

 

 

満たされていない大人は、子どもからエネルギーを奪う。

前述のお母さんは、子どもにアドバイスをするたび、生き生きとしていった。

それに合わせて、子どもは表情を曇らせていった。

 

 

エネルギーが子どもからお母さんに移動していく。

そんな姿を悲しく思った。

 

 

そうそう。

 

 

「この子は、私がいないと何もできないんです」

なんてことを、うれしそうに言うお母さんにたくさん出会ってきた。

 

 

僕が出会ってきたのは、中学生の子どもをもつお母さんである。

 

ちょっと待てよ、と思う。

それはうれしいことではない。

本来、とても困った状態なのだ。

 

お母さんがいないと何もできない中学生なんて困るよ。

 

 

でも、仕方がない。

お母さん自身を満たすためには、子どもが成長しない方が好都合なのだから。

 

子どもの心を満たしてあげよう

僕はじっくりと、その女の子の言葉に耳を傾けた。

ジャッジせず、アドバイスせず、ただ耳を傾ける。

「そうなんだね」と受け止める。

 

すると、少しずつ彼女の表情は明るさを取り戻していった。

 

 

聴けば聴くほど、相手は満たされる。

伝えれば伝えるほど、相手は奪われていく。

 

 

与えているようで奪っていて。

奪っているようで与えていて。

 

 

エネルギーって、逆の動きをする。

 

 

「親はなくとも子は育つ」なんて言う。

子育てのポイントは、黙ることである。

信じて見守ることだ。

耳を傾けることだ。

 

 

子育てに迷ったときに出逢いたい100の言葉

あなたが生き生きとするたびに、子どもが表情を曇らせてない?

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。