かっこいい先生になろうぜ。

あなたを変えた先生はだれですか?

そのとき事件は起こった。

中学生のとき、

大事件を起こした。

 

 

休日、ある朝。

僕らは小学校のグランドに集合した。

 

 

その数、30名。

全員が殺気立っている。

 

 

僕らの戦いが始まった。

「サッカーしようぜ」と集まった男子軍団。

 

 

やがて、雨が降り出し、

泥だらけになった。

 

 

男子30名。

雨中の決戦は昼ごろまで続いた。

 

 

男の子って、バカだよね、って思う。

ところが、事件が起きた。

 

 

ビンタビンタ♪

なんと、翌週は小学校の運動会。

グランド整備をしたのだけれど。

どうやらグランドは荒れ放題だったらしい。

 

 

週が明けた。

登校すると、僕らは音楽室に集められた。

その数、30名。

 

 

立たされた僕らの前には、

鬼のような形相をした先生たちが勢ぞろい。

イキリだった生徒指導の先生が口火を切った。

 

 

「なんで、そんなことをしたんだ?」

 

「あっ…、サッカーをしようという話になりまして」

 

 

はい、ビンタ。

 

「そんなことをすれば、こうなるってことが中学生なら、わからんかっ⁉︎」

 

「いや…、一応トンボはかけたんですけど…」

 

はい、ビンタ。

 

 

「言い訳するなっ!」

 

あーっ…、すいませんね。

 

「小学校にどれだけ迷惑をかけたと思ってるんだ⁉︎」

 

「え〜、いやぁ、雨が降るとは…」

 

はい、ビンタ。

マジでメンドクセー。

 

 

そんなわけで次から次へ先生が話をし、怒鳴り、ビンタ。

からのビンタ。

で、ビンタ。

 

 

手、痛くないっすか?

でもね、半分ぐらいの先生は、やらされてる感たっぷりだった。

 

 

僕はそういうのが読み取れる子どもだった。

だから、ビンタをする前に、じっと先生の瞳の奥をのぞき見る。

 

 

一瞬、怯むんだな。

かわいそうだな…って思った。

ホントは殴りたくないんだろうなって思った。

 

 

でも、この時代の先生たちは平気で体罰をした。

中には、殴りたくないのに殴っている先生もいたのだと思う。

それはそれで、気の毒だなって思った。

 

 

そんな中、たった一人だけ僕らを殴らなかった先生がいた。

 

 

空気?読みません!

その先生は開口一番、

こう言った。

 

「お前ら、いいわ。

 こうやって仲間が30人も集まってサッカーやれるなんて、うらやましいわ」

 

僕らはキョトンとした。

正直、「センコー、ぶっ殺すぞ」的なノリだったので、そんなこと言われたら、全員ホロっとしてしまう。

 

「ただ…、やり方は失敗だったよな。

 盛り上がったら終われないって気持ちもわかるけどさ。

 お前らなりに、できることをした方がいいんじゃないか?」

 

 

それだけだった。

なんだか、その話だけがスッと腹に落ちた。

僕らは話し合い、小学校に謝罪に行くことにした。

 

 

そして、全員でもう一度グランド整備をした。

幸い、小学校の先生たちは誰も怒ってはいなかった。

 

 

僕は先生が大嫌いだった。

でも、その先生だけは好きだった。

国語の先生で、だからというわけじゃないけれど、僕も国語の先生になった。

 

 

場の空気を読めば、全員がビンタする流れだったのだろうと思う。

職員室で、周りの目がどうだったか、僕にはわからない。

 

だが、その先生は、その先生の意思で行動をした。

かっこいいじゃないか、と思った。

僕らのだれもがそう思った。

 

 

荒れた学校で、、成立していない授業もたくさんあった中で、国語の授業だけはみんなちゃんと受けていた。

 

 

この話が、学級経営や生徒指導のヒントになれば幸いだ。

 

 

ハッピーな先生になるためのしつもん

あなたを変えた先生はだれですか?

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。