根っこの部分を大切に育てる

今日は日野原重明先生のお話です。
医師として活躍されるだけでなく、多数の著書を出版。
そんな日野原先生は、こう述懐します。
「今の私の基盤でもある行動力や勇気、負けん気といったものの根っこは幼い日の思い出の中にある」と。
幼い日の日野原先生は意地っ張りなところもあったそうで、幼いながらも頑として我を通す強情さがあり、よく親を困らせたそうです。
しかし、そんな強情さも、裏を返せば一度決めたことは絶対にやり遂げるという資質につながります。
だいたい物分かりのいい子どもなんて、子どもらしくないでしょう?
子どもはわがままなものです。
だって、それが子どもなのですから。
そういえば、以前取り上げた稲盛和夫さんや錦織圭さんにも、そんなエピソードがありました。
どうやら、子どもは子どもらしいのが一番のよう。
さてさて。
乳幼児の子どもはね、人生を生き抜くための根っこを育んでいるのです。
そういう時期から、枝葉のことを気にする必要などないのですよ。
ロバート・フルガムの著書『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』(河出書房新書)の中で、こう記されています。
「何でもみんなで分け合うこと。ずるをしないこと。人をぶたないこと。使ったものは必ずもとのところに戻すこと。ちらかしたら自分で後片付けをすること。人のものに手を出さないこと。誰かを傷つけたら、ごめんなさい、言うこと。 食事の前には手を洗うこと。トイレに行ったらちゃんと水を流すこと」
「釣り合いの取れた生活をすること。毎日、少し勉強し、少し考え、少し絵を描き、歌い、踊り、遊び、そして少し働くこと…おもてに出るときは車に気をつけて、手をつないで、はなればなれにならないようにすること」
こういったことを幼稚園時代に学んだと先生は述べています。
神戸のランバス幼稚園で過ごした日々。
初めてスキップができたことを担任の塩田先生が一緒になって喜んでくれたことがうれしくて、今でも覚えているのだそう。
幼児教育は人間の根っこを育てる場所です。
私たちはついつい人間の枝葉の部分に目が行きがちです。
どこの学校を出たか、とか。
どんな資格があるか、とか。
そういった目に見えるスペック。
それは人間の枝葉なのです。
早期教育だなんて言って、最近は幼いころからあれこれ身につけさせたがる。
どうも私たちは見栄えばかり気にして、枝葉を整えることに一生懸命になりがちです。
それを愛だと勘違いしているの。
愛ってのはね、枝葉を整えることじゃない。
根っこを育てることなんだ。
本当に大切なのは、目には見えない根っこであり、その枝葉を支える幹なのです。
人間だって自然の一部だから。
そこが変わることはありません。
まずもって根っこが大事。
今年7月、105歳で亡くなった日野原重明先生。
大樹を支えたのは、幼い日に育てた根っこでした。
【参考文献】
日野原重明 著
『僕は頑固な子どもだった』
(株式会社ハルメク)
