感動的な合唱を作り上げる合唱指導のコツ

ギターを弾く女の子

ビジョンを共有する

 

この曲を聴きながら、お読みください(笑)

 

「歌が上手いだけでは、人は感動しない」

 

このメッセージを届けることが、学級担任としての僕の仕事でした。

結局、学級として何を目指すか、なのです。

 

 

合唱指導を、「うまく歌を歌わせること」だと勘違いしている教師がいます。

楽譜がどうとか、表現がどうとか。

そういうことの前に、もっと大切なことがあるのです。

 

 

合唱コンクールの場合、金賞(優勝)を目指してがんばることは否定しません。

でもね、それだけを目標にするのは、寂しいんです。

一言で言えば寂しい

 

 

クラスに一人や二人、音痴な子っています。

案外、そういう子が大きな声で歌います。

さあ、そんなとき、どうするか。

むちゃくちゃ担任の先生は悩みます。

 

 

そこで悩まず、「お前、音痴だから小さい声で歌えや」みたいなことを平気で言えちゃうヤツは、僕のブログの読者にはいないと思うので。

そういう方はご退出ください。

そして、二度と読むな!(笑)

 

 

で、こういうとき、やっぱ目指すところがハッキリさせるのは大切です。

だから、最初にこの質問をします。

 

この合唱が終わったとき、どうなったら最高ですか?

 

ここ、とことん向き合わせます。

金賞(優勝)できれば、それでいいのか?

本当にそれでいいのか?ってね。

 

 

まあ、これは学級開きのときも同じことをします。

 

卒業式の日にどうなっていたら最高ですか?

 

最初は「涙が出たら最高」って言ってた子どもたちもね、とことん向き合うと変わるわけです。

「このクラスでよかったなぁって心から思えたら最高」

「卒業した後も、ずっとつながれる関係で入られたら最高」ってね。

 

 

ビジョンを共有することです。

そして、それができたら、できるだけ手放すことです。

信じて手放す。

 

 

そうするとね、クラスに一人ぐらいいてくれる「音痴な子」が、クラスにドラマをもたらす存在になるわけです。

全然合唱に参加しようとしない不良少年もドラマを生み出すわけですよ。

 

 

欠点は「欠かすことのできない点」だよね。

ドラマがないと、良い合唱にはならんのです。

 

 

プロ教師には、そんな「ちょっと語れる合唱の名場面」が必ずあるわけですよ。

他のクラスの合唱を聞いて、「あぁ、何年前この曲を歌ったときは、こんなことがあったなぁ〜」みたいなね。

 

 

古いラブソングを聴いた瞬間、その頃付き合ってた女の子を思い出す感じですな。

 

 

担任を困らせるような出来事は、「美味しくなるために必要なスパイス」なのです。

 

 

子どもが主役だぞ!

学級担任の仕事は、子どもが手の届かないところに手を差し伸べることです。

あっちで悩んでいる子がいれば聞いてやり、

こっちで苦しんでいる子がいれば聞いてやり。

 

 

「先生は何もしてくれないね」という声など気にせず。

表舞台は子どもに任せ、裏でこそこそケアをする。

 

 

楽譜も読めないのに、音楽指導をうんぬんかんぬん…というコメントをいただいたので、書いておきます。

僕も楽譜なんて読めません。

でも、毎年素晴らしい合唱になりました。

 

 

合唱を聴けば、そのクラスの教員の力量がわかります。

学校によっては中間発表会なんてものがあったりもします。

 

 

本物のプロ教師は、中間発表会から本番までに魔法をかけます。

合唱が見違えるほどよくなります。

 

 

僕はそんな先生を見ると、「この人、ホンモノだな」と思ってきました。

そして、そんな先生たちには共通点がありました。

 

 

楽譜なんて読めませんよ。

教科だってバラバラです。

でも、子どものことをよく見てるんです。

寄り添い上手なんです。

 

 

学校は音楽家を育てる場所じゃない

学校教育は専門家を育てる場所ではありません。

美術の先生は、画家を育てているわけではないのです。

音楽の先生は、音楽家を育てているわけではないのです。

 

 

国語の授業で作家を育ててはいませんし、英語の授業は英会話教室ではありません。

ユーキャンの通信講座ではありませんから、学校で学ぶことが実用的かどうかという議論がそもそもおかしいのです。

 

 

そういうことを忘れ、公教育が予備校のようになってはいけません。

成果ばかりを求めると、教室はますます息苦しいものになります。

 

 

音楽って「しむ」って書くでしょ?

まず、そこなんです。

 

 

上海日本人学校にいたとき、合唱を合唱祭にするか、合唱コンクールにするかで、職員で議論になったことがあるんです。

指導力のない教員(この場合の指導力は合唱指導ではない)は、コンクールの方が子どもたちのモチベーションを上げやすいと言うわけです。

まあ、その気持ちもわかります。

 

 

でも、そこで一人の若い先生がおっしゃったことが素敵だったのです。

 

「コンクールで優勝できるのは1クラスです。でも、大切なのは優勝することではないと思います。むしろ、合唱は終わった後が大事だと僕は思います。優勝できなくて残念…と思うクラスがたくさん出る方が僕は嫌です」

 

 

日ごろ、ほとんど発言をされない先生だったわけですが、僕はそれを聞いて深くうなづきました。

合唱指導を通して、何を目指すか。

大事なのは、そっちなのです。

 

 

ハマちゃんの歌、うまくないけど、心に響くんです。

結局、そういうことなのさ。

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」として人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・2018年~2019年 100人のボランティアスタッフをマネジメントして『子育て万博』を主催。

・2021年~2024年 パリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフのマネジメントを担当。

・経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムCrewDocks®︎を開発。企業研修など精力的に活動中。