先生が本橋麻里さんなら、学級はきっとうまくいく♪
おめでとう!カーリング女子日本代表!
女子カーリング日本代表が平昌オリンピックで銅メダルを獲得しました。
英国との3位決定戦。
第10エンド、英国のスキップであるイブ・ミュヘッドさんが投じた最後の一投。
氷上を駆ける赤いストーン。
理想的なコースを描いたように見えました。
しかし、ハウスの中心に陣取ったのは、日本の黄色いストーンでした。
吉田夕梨花さん、鈴木夕湖さん、藤沢五月さん、吉田知那美さん。
氷上での4人ばかりに注目が集まります。
ですが、もしかしたらメダル獲得の影のMVPは本橋麻里さんなのかもしれません。
マリリンこと本橋麻里さん。
2006年のトリノオリンピックでセカンドとして7位入賞。
一躍「カーリングの顔」となった彼女は、2010年のバンクーバーオリンピックでもセカンドとして出場し、8位入賞を果たします。
しかし、転機が訪れます。
その後、それまで所属していた『チーム青森』を脱退。
ロコ・ソラーレ(LS北見)を結成します。
イチからスポンサーを集め、選手を集め、競技を続けます。
しかし、2014年ソチオリンピックの出場は叶いませんでした。
決して順風満帆ではなかったLS北見。
2015年にはスキップの藤澤五月さんがチームに加わります。
こうして、彼女を中心としたLS北見は、ついに平昌オリンピックへの切符を手にします。
本橋麻里さんはリザーブの選手として、コーチボックスから戦況を見守ります。
今でも実力はピカイチ。
開幕戦では、吉田夕梨花さんが左肩に違和感を訴え、麻里さんは緊急出場。
しかしながら、安定したプレーを見せます。
「いつでも準備はできている」と言う、まさに最強のリザーブです。
陽の当らぬ場所で咲くということ
プレーヤーとしても、一流である本橋麻里さん。
でも、彼女は決めました。
「自分はなるべく試合には出ない」と。
第一人者である彼女が前に出ては、若い選手たちが伸びないと考えたのでしょうか。
氷上でプレーしたい気持ちをグッと抑え、バックアップに徹します。
選手たちが宿舎で休む中、黙々とストーンを投げ、データを取り続けます。
ナイトプラクティスと呼ぶのだそうです。
まさに、寝る間も惜しんで氷やストーンの特徴を細かく掴んでいくのです。
すべては、カーリングのため。
すべては、チームのため。
彼女は献身的に動き続けます。
メンタルスポーツであるカーリング。
見ている私たちまで、息を飲む。
まして、プレーしている彼女たちにかかるプレッシャーは想像すらできません。
そのメンタルを支えたのも麻里さんでした。
第5エンドが終わると、休憩時間になります。
通称「もぐもぐタイム」と呼ばれる休憩時間。
プレーエリアまで降りてきて声をかけます。
おやつを差し出します。
精神的な支柱であることが伺えます。
19歳という若さで、初出場したトリノオリンピック。
「マリリン」の愛称で一躍「カーリングの顔」になりました。
そんな彼女がリザーブとして、あえて控えに回ります。
若い選手を励まし、サポートします。
誰もいなくなったリンクで、黙々とストーンを投げ続けます。
決勝トーナメントに進むこともなく、銅メダルを取ることもなければ、そこは陽の当らぬ場所であったかもしれません。
いっときスターとなった選手が、今度は陽の当らぬ場所で咲く。
それは、決して簡単なことではないと思うのです。
お母さんでもある麻里さん。
2歳の息子さんが見守るオリンピックの舞台で、彼女は偉業を成し遂げました。
本橋麻里さんの在り方から学ぶ。
彼女の在り方には、多くの学びが溢れています。
黙々と教材研究に励む。
学校行事の準備をする。
深夜、日付が変わるまで、進路の書類を作り続けたこともありました。
それらは、いわば保護者の目には見えない仕事です。
卒業式に向けて、手紙を書いたり、動画を作ったり。
これらは、やってもやらなくても良い仕事です。
それでも、先生はやるのです。
やらずにはおられないからやるのです。
「学校の先生」の仕事には、そういうところがあるのですね。
我が子の幼稚園の行事に行く。
すると、たくさんの掲示物が目に飛び込んできます。
一つ一つ作り上げるのに、どれほどの時間を要するでしょうか。
行事も同じです。
授業も同じです。
時間をかけてきたもの、入念に準備をしてきたものは、一目見ればわかります。
批判的な世の中です。
行事後の保護者アンケートには、心ないご意見をいただくこともあります。
それも甘んじて受け入れる必要があるのでしょう。
時に心が折れそうなこともあるでしょう。
でも、忘れないでください。
陽は当らぬかもしれません。
評価はされないかもしれません。
それでもやる。
やりたいからやる。
やらずにはおられないからやる。
そんな在り方が教室を変えるのだと思います。
先生は学級のリーダーであってはいけません。
精神的支柱としてどっしり構えながら、コーチボックスから子どもたちを見守る。
「もぐもぐタイム」になれば、子どもたちに声をかけ、心を支える。
子供や保護者の目の届かぬ場所で、黙々と準備を進める。
本橋麻里さんの在り方には、たくさんの学びがあると思うのです。
若い4人の選手がのびのびとカーリングに打ち込めたのは、本橋麻里さんのたゆまぬ努力があったから。
先生だけでなく、子どもと関わる大人の在り方として、心に留めておきたいと思います。