ゲームやスマホばかりしている子

子どもは子どもらしく

スタンフォード大学のアヴラム・ゴールドスタイン教授は、とても残酷な実験をしました。

お猿さんに注射針を刺します。

お猿さんがレバーを押すと、モルヒネが投与されます。

 

 

やがて、お猿さんは通常の行動をやめ、薬物に依存するようになります。

 

 

この症状はネズミなど、他の動物にも見られる現象でした。

檻に入れたネズミが、「モルヒネ入りの水」と「普通の水」の両方を飲めるようにします。

すると、ネズミは「モルヒネ入りの水」を選択するようになり、やがて死に至ります。

 

 

ですから、薬物には依存させる成分が含まれている。

そう信じられてきました。

おそらく、多くの人もまた、そう信じているはずです。

 

 

ところが、です。

この実験に疑問をもった人がいました。

 

 

サイモン・フレーザー大学の研究者ブルース・アレグサンダー博士です。

彼は、檻の中にネズミが一匹しかいないことに着目しました。

 

 

そこで、ラットパーク(ネズミの楽園)を作りました。

楽しいアクティビティーを用意し、たくさんの仲間をラットパークの中に放しました。

そして、そこにも同じように「モルヒネ入りの水」と「普通の水」の両方を飲めるようにしたのです。

 

 

 

 

すると、どうでしょう。

ネズミたちは「モルヒネ入りの水」を選ばなかったのです。

 

 

また、一匹で檻の中に閉じ込められた「依存症のネズミ」をラットパークに放したところ、そのネズミもまた「モルヒネ入りの水」を選ばなくなったのです。

 

 

僕ら人間は、大きな怪我をし入院すると、モルヒネを投与されます。

それは、街中で売られている「非合法な薬物」よりも純度の高いクスリです。

しかし、退院後「薬物中毒になった」という人に出会ったことはありません。

 

 

ベトナム戦争では全アメリカ兵の20%がヘロインを使用していたそうです。

しかし、そのうち95%を麻薬の使用をやめられたと言います。

 

 

 

アルコール依存というのがあります。

でも、アルコールを飲めば、必ず依存症になるかと言うと、そんなことはありません。

 

 

ギャンブル依存というのがあります。

でも、パチンコに行ったからといって、必ずしもギャンブル依存になるわけではありません。 

 

 

 

子どもたちもゲーム依存になったり、スマホ依存になったりしますね。

じゃあ、テレビゲームを持っている子が全員依存するのか。

スマホを持っている子が全員依存するのか。

 

 

そんなことはありません。

テレビゲームができないからイライラして当たり散らす。

スマホが触れなくて、気になって仕方がない。

それは決して、テレビゲームが悪いわけでも、スマホが悪いわけでもないわけです。

 

 

ところが、大人という生き物の浅はかです。

「取り上げればなんとかなる」と考えます。

 

 

ポルトガルという国があります。

国民の約1%がヘロイン中毒だったと言われる国です。

 

 

薬物を厳しく取り締まり、薬物依存する者を犯罪者として扱いました。

社会からどんどん隔離していったのです。

それでも、薬物依存は増加の一途を辿りました。

 

 

そこで、大きく舵を切ります。

なんと、薬物を解禁にします。

そして、薬物を禁止にするために充てていた予算と労力を、薬物依存症患者に社会復帰を促す事業を推進し、生きがいをつくることに使ったのです。

 

 

薬物依存症患者は、これまでのように犯罪者として扱われず、社会復帰しやすくなったのだそうです。

すると、薬物使用者は50%も激減したのです。

 

 

このお話は、大変示唆に富んでいます。

 

 

僕らが求めているものは「つながり」です。

人間は社会的存在であり、関わり合うことで存在できています。

 

 

他者との「つながり」がなくなれば、それは「この世に存在していないこと」と同義なのです。

 

 

そして、「人とのつながり」を感じられなくなると、人は「別の安らぎ」を求めるようになります。

社会と交わることをあきらめ、別の刺激で自分を満たすようになります。

 

 

スマホに依存する子。

ゲームに依存する子。

たくさん出会ってきました。

 

 

仕方がないのです。

他に関係性を構築できるものがないのです。

 

 

まずは、つながりをつくること。

禁止するのではなく、いっしょに楽しんでみることもいいでしょう。

 

 

彼は、彼女らは言います。

「他に楽しいことがない」と。

 

 

問題は、スマホやゲームじゃない。

「他に楽しいことがない」、こちらに注意を向けましょう。

 

 

幼児でも癇癪を起こす子どもがいますね。

スマホを見せろ、ゲームやらせろ、youtube見たい!って。

お母さんはお友だちとのお話に夢中になって、スマホを渡して知らんぷり。

 

 

子どもの「こっち見て行動」などお構いなしです。

スマホが育児をしてるんですね。

 

 

スマホを見ている間、テレビを見ている間、お母さんはフリーになる。

ラッキーだわ、と思う。

結局、子育てって手を抜いた分だけ、しっぺ返しに合うのです。

 

 

「スマホばかりやってます」

「ゲームばかりやってます」

って言って、学校にヘルプを求める。

 

 

「それを買い与えたのは誰だよ」といつも思いました。

 

 

人間は社会的な存在です。

つながりが人間を人間足らしめます。

そのことを忘れないで下さい。

 

 

魔法の質問

 どんなつながりを作りますか?

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。