ある雨の夜、見知らぬオヤジに怒鳴られて♬


人に怒られて、楽しい気持ちになったことがあるだろうか?

 

 

どういうわけか、

隣の車のオヤジが怒鳴り込んできた。

 

 

「なんチュー停め方してるんだ!

 事故るかと思ったぞ!」

と言うのである。

 

 

ワイパーが全力で稼働するほどの大雨だった。

夜の公園は薄暗く、それでどうやら僕は、車線をはみ出して車を停めてしまったらしい。

 

 

それでも、隣の車とは人が乗り降りできるぐらいの幅はあったと記憶している。

 

 

オヤジが怒鳴り込んでくる5分ほど前から、僕は駐車場に車を停め、スマホをイジっていた。

隣の車のルームランプが点灯し、人がいることも認識していた。

 

 

それで、冒頭の発言。

ふとサイドミラーの向こう側に人影。

僕は窓を下ろし、下から覗き込む。

 

 

「なんチュー停め方してるんだ!

 事故るかと思ったぞ!」

 

 

オヤジが怒鳴った。

その言葉を耳にして、僕はなんとも楽しい気分になったのである。

 

 

 

彼は僕の車と自分の車の距離が近いことに怒っていた。

駐車場に頭から突っ込んでしまったがために、どのようにしたら出庫できるのかと四苦八苦悩んだ末の行動だったのだろう。

 

 

僕ならば、きっとこう伝える。

 

 

「申し訳ないんだけど、あと10㎝ほど車を離してもらってもいいですか?」

 

 

要求はストレートに。

要点を絞って具体的に。

結論から伝えるのは、まさに「□型」である。

 

 

コミュニケーションとは情報伝達である。

伝わらなければ意味がない。

 

 

ところが、オヤジと来たら、

「なんチュー停め方してるんだ!」

と言うのだ。

 

 

「どのように停めているのですか?」

と尋ねられたとき、「ストレート型」の答えはこうだ。

 

 

「見てわかりませんか?」

である。

 

 

「なんチュー停め方してるんだ!」

この表現技法は「変化球型」の表現である。

 

 

回りくどすぎて、伝わらないのである。

 

 

次にオヤジから出てきた言葉。

この言葉が僕をさらに「コミュニケーションの迷宮」へと誘うことになる。

ちなみに、「誘う」と書いて「いざなう」と読んでほしい。

 

 

その言葉が「事故るかと思ったぞ!」である。

 

 

オヤジ、ちょっと待て。

僕の車は停車中である。

この車にぶつけたら、そりゃ完全にアンタの運転ミスだ。

 

 

僕の中で「事故るかと思ったぞ!」は、どちらも運転中に口にする言葉である。

出会い頭でぶつかりそうになって初めて「事故るかと思ったぞ!」である。

 

 

 

そう。

この「事故るかと思ったぞ!」には、丁寧な説明が必要である。

もう少し前置きもあった方がいい。

 

 

「頭から駐車場に突っ込んでしまった。

隣との車幅もない。

出庫するときに、車を擦って自損事故をするかと思ったぞ!」

 

 

そう言ってもらわなければ、わからないのだ。

前置きもなく、丁寧な説明もない。

自分の気持ちだけをポンと伝える。

つまり、オヤジは「○型」ではなく「△型」である。

 

 

まして、オヤジは5分間、車の中で考えていたのだろう。

車幅が近いという課題と真剣に向き合っていたはずである。

 

 

「とりあえず、出庫してから考えよう」ではなく。

熟考に熟考を重ねていたのである。

 

 

そして、その物言い。

 

 

なるほど、あなた。

「△2」ですね。

 

 

 

オヤジが怒鳴り込んできた一瞬。

僕はそんなことを考えていた。

 

 

正解か、不正解か。

そんなことはどうでもいい。

 

 

 

「なんチュー停め方してるんだ!

 事故るかと思ったぞ!」

 

 

 

この言葉から、相手のことを理解する。

その時間がとても楽しいのである。

 

 

思わず機嫌よく

「あっ!ごめんさい!」

と言って、車を少し離して入れ直した。

 

 

宿命が「和」の僕は、人と争うことを好まない。

まして、「□型」の人間は「無駄」が嫌いである。

人と争うことで失われる時間と体力は、無駄以外の何物でもない。

 

 

他者の怒りすら客観的に眺める。

すると、怒りを受け取ることもなくなるのだろう。

 

 

まことに愉快な夜であった。

心の残りがあるとすれば、誕生日を聞けなかったことである。

 

くればやし ひろあき

公立中学校で16年間3000人以上の子どもたちと出会ってきた思春期の子どもの専門家としてメルマガ配信。当初、学校の先生に向けて発信したが、先生たちには見向きもされず。なぜかお母さんたちの心を掴んでしまい、北は北海道から南は沖縄まで全国各地に呼ばれるようになる。個人セッションをスタートすると、お母さんたちで行列ができる。
気がつけば、幼保小のPTAや高校生、なぜかシルバー人材センターまで、いろんなところに呼ばれる講演家に。
「お母さんとお母さんをつなぐ」をコンセプトに『子育て万博』を主催。妻とともにお母さんコミュニティー『プレシャス』を主宰し、名古屋にてお母さんのための寺子屋『ラブリー』を開校。
また、STRインストラクターとして年間350名が入門講座を受講。その上位講座である門下生養成プログラムは全国16都道府県から参加し、3日で満員御礼となる。
365日、子育てからパートナーシップまで、人妻たちの悩みに寄り添う生活を続けている。
妻と3人の子どもの5人家族。1978年生まれ。出身地名古屋。