子育てのゴールとは何でしょうか?

子育て

この夏、長男くんがデンマークに留学します。

それで、東京までビザを取りに行きました。

17歳、ギリギリ未成年なので、保護者が付き添わねばならないのです。

 

 

すべての予約は彼自身がやりました。

留学先を斡旋してくれる会社を見つけるのも、その会社とのやりとりも、予防接種の予約も。

全部全部、自分でやりました。

 

 

クレジットカードの決済をするとき、お金を支払うときぐらいが親の出番でした。

あとは全部、「自分でやりなさい」でした。

 

 

それで今回の東京行き。

僕は昼ごろ到着するように新幹線で行きました。

 

 

長男くんは夜行バスです。

「新幹線なんて10年早いわよ!」と。

自分でバスを探し予約して、前日の夜遅くに家を出ました。

 

 

彼は趣味がサウナなので、東京でサウナに行っていたそうです。

 

「父ちゃん、お昼どうする?」

とLINEが届いたので、「ご自分でどうぞ」と返信しました。

 

 

そんなわけで、お昼に合流。

無事にビザを取得しました。

僕は審査中、隣に座っていただけ。

一言も発することはなく。

係の人に、すべて自分で説明していました。

 

 

で、帰り道、「帰りは新幹線で帰りたいな」と言います。

仕方がないので、1万円を渡し、「これで帰ってらっしゃい」と伝えました。

僕はいくつか書店を回る予定。

彼はこのあともう1件、サウナに行くとのことでした。

 

 

ところが後で、「やっぱりバスで帰ります」とLINEがありました。

新幹線代1万円ですが、バスで帰れば7~8000円は浮きます。

 

 

彼はそのお金で美味しいものを食べたり、美術館に行ったりと一人旅を楽しんだようでした。

というわけで、夜行バスのため、帰宅は明朝になります。

 

 

親の中には、「一緒に行って、一緒に帰って来ればいいじゃないか」と思う方もいるのではないかな、と思います。

冷たい親に見えるでしょう?

 

 

でもね、僕は思うんです。

親である僕と妻は、予定では彼より早く死にます。

もしかしたら、予定が早まって明日、死ぬかもしれません。

 

 

だから、ちゃんと生きていける力をつけてあげなければなりません。

親がチケットを買ってあげて新幹線に乗せてあげるのも優しさです。

でもね、「自分でやってみなさい」というのもまた親の優しさだと思うのです。

 

 

一番の不幸は30過ぎても、40過ぎても、親の加護なしには生きられない状態に育ててしまうことです。

何も「夜行バスのチケットの買い方」が「生きる力」だと言っているのではありません。

 

 

いざというとき、自分は大丈夫だ、自分の力で乗り越えられるんだ、という自信を育ててあげることが大事なのです。

 

 

そのために必要なことは見守ることです。

一見突き放しているように見えますが、必要な支援は欠かしていません。

相談があればいつでも乗れる体制はできています。

 

 

そのうえで、やらせてあげることです。

選択させてあげることです。

 

 

そうやって、子どもから大人に育てることが、子育てだと僕は思うのです。

 

 

 

我が家は上海で暮らしていました。

海外旅行にもよく行きました。

 

 

子どもたちが「トイレ!」と言います。

僕はトイレには連れて行きません。

「トイレはどこですか?」という現地の言葉を教えます。

子どもたちは自分で店員さんに、「トイレはどこですか?」と尋ねます。

 

 

子どもたちが「喉が渇いた」と言います。

僕は現地の通貨を渡して、「買っていらっしゃい」と伝えます。

購入している姿を遠巻きに見守ります。

何かあれば手を差し伸べますが、手を差し伸べる機会はありませんでした。

 

 

こういうことは一朝一夕にできるようになるわけではありません。

繰り返し繰り返し、やらせてあげることで、「自分はできる」という自信につながります。

 

 

子どもが親を必要としなくなることが、子育ての終わりだと思っています。

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。