幸せとは何かを考えさせられたプーケットの旅
プーケットで、ぼんやり海を眺めていた。
ビーチベットとビーチパラソルをセットしているお兄ちゃんに「いくら?」と尋ねたら「200バーツだよ」と教えてくれた。
彼はこうしてこの場所を200バーツで売って生計を立てている。
約1000円である。
この海を眺めて過ごす。
それはとても贅沢のように思えた。
お兄ちゃんの向こう側では、リヤカーのような屋台でパッタイを焼いているおじさんがいた。
海を眺めながら、その場所をキッチンにして料理を振る舞っている。
僕らを海まで運んでくれたドライバーさんは僕らが遊んでいる間、車の中で昼寝をしていた。
夕方、レストランに行こうと思って部屋を出た。
海辺のレストランに行く近道で、ホテルスタッフの寮や食堂の前を通り過ぎた。
若者たちが談笑しながら歩く姿は実に楽しそうだ。
門を抜けるとき、警備スタッフの若者が笑顔と敬礼で僕らを見送ってくれた。
まもなく夕日が沈む。
日々、この海を眺めながら、この夕日を眺めながら、このレストランのスタッフたちは過ごしているわけで。
それは何とも贅沢な時間に思えた。
たぶんそれを当たり前のように享受している彼らには、それを「贅沢な時間だ」なんてカケラも感じていないだろうけど。
幸せってたぶんそういうものなんだよな、と思ってみたりして。
日本に帰ってきた。
ホテルのフロントでホテルのスタッフがモタモタしていた。
別に僕はイライラなどしていないけれど、彼女は何度も頭を下げた。
胸には「研修中」のバッジが光っていた。
相手は怒っていないし、不愉快な気持ちでいるわけでもないのだから、謝る必要などないのだけど。
あー、これが日本だよなぁ、なんて思った。
飲食店、コンビニ、アイスクリーム屋、駅の改札。
いろんなところで働く人に出会ったけれど、楽しそうに働いている人に出会うことはなかった。
不思議なものだ。
タイ料理屋さんでデザートを出てこなくて、スタッフさんに「まだ来ないんだけど」と尋ねたら「確認してくるよ」と言う。
すぐに戻ってきて、「あと3分だ」と言う。
ところが、待てども待てどもデザートは届かない。
彼が戻ってきて「もうデザートは届いた?」と尋ねてきたので「まだだよ」と答えると、もう一度厨房の奥へ消えていった。
そして、一言、こう言った。
「あと2分だ!」
笑顔で言うものだから笑ってしまった。
もちろん、こういうの、日本では言えない。
なぜ言えないのか、それを考えるのも興味深い。
そんなわけで、「幸せとは?」についてとても考えさせられたよ、という話でした。