ウザがられてる?、好かれてる? 若い人に慕われるベテランは聞く姿勢が優しい
ある市の教育センターからご依頼をいただき、初任者研修の講師をさせていただいたときのこと。
ちょうどその日は各校の生徒指導主事の先生と、今年先生になった方が合同で研修に参加してくれました。
生徒指導主事というのは、校内の生徒指導を司るリーダー的ポジションで比較的年齢を重ねた先生が多い。
そんなベテランチームに混ざって、ピチピチ(死語)の若い先生方が研修を受けてくださいました。
ベテランと若い先生が同じテーブルに座りまして、僕がそこにお題を投げる。
その答えを伝え合いながら、互いの考えを深めていく。
僕はいつも通りの研修を進めました。
その日のテーマは「校則」。
僕が与えた問いは「なくてもいいルールはありますか?」です。
ちょうど僕の目の前のテーブルで、ハッとする出来事がありました。
最初に話をしたのは若い女性の先生でした。
彼女は「お化粧禁止」について時代にそぐわないのではないか、という話をしていました。
社会に出たらある意味ではマナーとも言え、節度あるメイクを覚えていくことも必要では、という話をしてくれました。
僕は「なるほどな」と思ったのですが、そこでちょっとした事件が起こります。
斜向かいの腰掛けた、いかにもベテランという男性の先生が、「それはね…」と言って被せるように、話し始めたんです。
何を話しているかはわかりませんが、なんとなく感じたのは「学校ってのはね…、教師ってのはね…、だから、つまり、化粧なんて認められないんだよ、えっへん」という話をしてるんだろうな、ということ。
その向かいに鎮座したもう一人のベテランも腕組みしたまま、うんうんうなづき、「あー、ごもっとも、ごもっとも」という表情。
はい、若い女性の先生の顔はどんどん曇っていきます。
そのあとのグループワーク、彼女はずっと口を結んだままでした。
おい、ベテラン陣!
そーゆーとこやで!!
…というわけで、グループワーク終了が、こんな話をしました。
「昨今、心理的安全性というのが話題ですよね。
ちなみに、今のグループワーク、それぞれのテーブルって、心理的安全性は守られていました?
まさかと思いますけど、他の人の意見にマウントとって、論破しちゃったなんて方いませんよね?」
こんな話をしましたら、そのテーブルだけじゃありませんね。
それぞれのテーブルのベテラン陣がハッとした表情を見せてくれました。
はい、気づいてくれてありがとう。
「特にベテランの先生がマウント取っちゃうと、若い先生は意見が言えなくなる。
そういうことって往々にしてあって、それが風通しの悪い職場を作っていくんですよね。
だから、ちゃんと聞けるベテランの先生はすごいですよ」
はい、聞けてる先生はうれしそうです。
「あ、そうそう。
自分と異なる意見には、学びがいっぱいです。
だから、自分と異なる意見に出会ったら、論破して一蹴しちゃうんじゃなくて、よく聞いてみてください。
もっと深く知るために、耳を傾けてみてください」
そんな話をしましたら、そのあとのグループワーク、いい感じでしたね。
若い先生が積極的に話をし、ベテラン陣がその言葉に積極的に耳を傾けながら、話が深まっていくんです。
年功序列の日本の社会は、年を取っているだけで偉く、また優秀に見えてしまう。
若い人の意見は劣り、老いた者の意見ほど正しい、という錯覚を覚える。
本来、意見や考えなんてものは、若かろうが年齢を重ねていようが、どれもフラットで、どれも素晴らしいわけです。
聴く耳持ってるベテランはカッコいい。
それだけでも知って帰っていただければな、と思いました。
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