子どもを孤立させないために必要なこと

生徒が孤立

教室で孤立する子は、おとなしい子ばかりではない

教室の中で孤立してしまう子がいます。

そう言われると、「おとなしい子」をイメージするでしょう。

 

口数少なく、引っ込み思案。

自分から飛び込めない子。

 

 

ただね、おとなしいから孤立するって子は、僕の見てきた限り少ないように感じます。

おとなしい子は、おとなしい子同士で上手に人間関係を育んでいきます。

 

 

教室でひとり、本を読んでいると、なんだか心配してしまうのだけど。

当人に聞くと「本を読みたいから、一人でいい」って…。

 

もちろん、心からそう言っているのかはわかりませんが、必要なときは友だちと楽しそうにしているから、いいのかなって思います。

 

一般的な孤立する子のイメージ。

それよりも多いのは、こんな子ではないでしょうか。

 

人の気持ちをなかなか理解できない子

人の悪口を平気で言ってしまう子がいます。

本人に悪気はありません。

 

見たものをそのまま口にしてしまうのです。

「太ってるね」

「頭、悪いね」

本人に相手を傷つけている意識はありません。

でも、言ってしまうのですね。

 

「そんなこと言っちゃダメでしょ?」と言われても、気が付けません。

「太っている子に太っていると言うのが、なぜダメなの?

 言われていやなら、痩せればいいじゃん」

そんなことを平気で言ってしまうのです。

 

また、力の加減がわからない子もいます。

クラスメイトが友だちの肩をポンと叩く。

「おい!◯◯!」

「なんだよ!痛て〜な」って笑いあってる。

 

すると、同じ調子でバーン!って叩いちゃう。

叩かれた方がすごく痛そう。

 

でも、当人は気がつかない。

「それは痛いんだよ」

と伝えても、

「なんで僕だけ注意するの?

 あの子も叩いていたよ」

となる。

 

それほど仲良くない子を叩いてしまってトラブルになる子もいます。

 

隣の子がノートを書いてると、それを取り上げて自分が写し出す子。

「えっ⁉︎私、まだ書いてるのに!」

「でも、私、写させてくれないと書けないもん。目が悪いから」

なんて言ってトラブルになる。

 

列に並べないで、横入りしてしまう。

他人の気持ちを察することが苦手。

うまく気持ちを言葉にできなくて、すぐに暴力を振るってしまう。

 

そういう子が、どの教室にも一人ぐらいいるのではないでしょうか。

 

だんだんと周囲の子は近づかなくなってきます。

場合によっては、保護者から「あの子とは関わらないで」と言われてしまうような子もいるわけです。

どんどん孤立していきます。

 

アンタッチャブルな存在にしてしまう

僕は常々

「いじめは許さない!」

と口にしてきました。

 

生徒指導の先生!

怖い顔!

だったからかはわかりませんが、子どもたちは、僕の言葉をちゃんと守ってくれました。

 

すると、いじめが起きない代わりに、以前のクラスで「孤立」していた子が、僕のクラスでは逆にアンタッチャブルな存在になっていくことがありました。

 

好き放題していても、周囲は文句も言えない。

のびのびと暮らしています。

 

「学校が楽しいって言うようになりました」

保護者も喜んでくれるようになりました。

 

一方で、他の子どもたちが不満を抱えるようになってきました。

若い僕には、そのバランスをうまく取ることができなかったのです。

 

必要なのは、理解なのか、我慢なのか

今でも、そのバランスを上手に取ることはなかなか難しいなと感じます。

 

やはり、双方にきちんと伝えていくべきです。

 

周囲の理解で「いじめ」が起きないこともあります。

周囲の我慢で「いじめ」が起きないこともあります。

 

理解は大事。

動作やしゃべり方に特徴があるとか、勉強やスポーツが苦手とか、そんなことを攻撃することはあってはならないことです!

きちんと指導していくべきこと。

相手のことを理解してあげて、苦手なら助けてあげればいい。

動作が遅いなら待ってあげればいい。

 

そこはもう、理解が大事。

 

でも、我慢が必要ならば、きちんとそこは説明していくべきだと思っています。

周囲の子どもたちの我慢で成り立っているとしたら、それはきちんと先生が伝えていかなきゃいけない。

そうやって、先生がそこから逃げないことが、いじめの抑止にもつながると思うのです。

 

「先生は、あなたの言ったことは悪口だと思う!

 太ってる人に太ってるって言って、何が悪いの?ってあなたは言う。

 でも、それは人を傷つける言葉。

 見たものをそのまま伝えているだけとあなたは言うけれど、それは人と人との関わりの中では、許されることがないこと」

 

 

もちろん、なかなかその子のお腹には落ちていかないでしょう。

でもね、落ちなくたっていいんです。

 

「ちゃんと、先生も叱ってくれている」

そういう想いを、周囲の子にもってもらうのは大事なことです。

そこ、満たしてあげるんですね。

 

そのうえで、「だからと言っていじめていいことにはならない!」ってことも、きちんと伝えていく。

 

物事には裏と表があります。

どちらもきちんと手を差し伸べていきたい。

 

どちらか一方を指導するからうまくいきません。

裏も表も指導していくことが大切です。

 

その一つの基準は、「理解」なのか、それとも「我慢」なのかというところです。

 

アンタッチャブルな存在にしていくと、周囲も不満を抱えていくことになります。

それは、やがて目の前ではなく、目に見えないところでのいじめにつながっていくと思うのです。

 

ネット上や大人の見えないところで蠢く悪意。

そうなってから手を差し伸べるのは、カンタンなことではありません。

 

ハッピーな先生になるためのステップ

 子どもたちを孤立させないために必要なのは、そこから逃げない先生の勇気

 

 

 

 

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」として人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・2018年~2019年 100人のボランティアスタッフをマネジメントして『子育て万博』を主催。

・2021年~2024年 パリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフのマネジメントを担当。

・経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムCrewDocks®︎を開発。企業研修など精力的に活動中。