教室に必要のない子なんていない。
ガチンコファイトクラブか?
「お前ら、オレに(学校に)来てほしくないんだろーっ!」
そう言うと、彼は大暴れした。
僕は否定もせず、肯定もせず。
ただただ暴れる彼を押さえつけるのに、必死だった。
正直言えば、僕も疲弊していた。
目が合う子、目が合う子に殴りかかる彼に、嫌気がさしていた。
言葉が通じないのではないか。
そう思った。
わかりあえる日など来るのだろうか。
心からそう思った。
僕は何度も何度も、思いを語った。
聞く耳などもたない彼に、何度も言葉をかけた。
そのたびに、「うるせ〜!」と言って彼は暴れた。
2年目の春。
僕が初めてぶつかった壁だった。
学校に来てほしくない生徒
変形の制服を着て金髪の彼を、先生たちは異物のように扱った。
僕のクラスの生徒になるまで、彼は教室に足を踏み入れることなどなかった。
時代遅れの服装で正門を突破しようとする。
そのたびに、追い返されていたからだ。
そんな彼が、僕に叫んだ。
「お前らは、オレに(学校に)来てほしくないんだろーっ!」
その言葉だけが、僕の耳に響いていた。
心を見透かされたような気がした。
これが先生の仕事だろうか。
これが僕のやりたかったことだろうか。
「学校を守るため」と言う。
「他の生徒の権利を守るため」と言う。
本当にそうだろうか。
僕は目の前の子どもたちをハッピーにしたかった。
でも、この仕事は「学校のため」の仕事ではないのだろうか。
そう思うと、急に自分がしぼんで見えたのだ。
教室に必要のない子なんていない
変形の学生服。
金髪。
それは本当に問題だったのだろうか。
もちろん、学校に来たいならば、服装ぐらい整えろ。
そんな先生の気持ちもわからなくはない。
でも。
ある事件をきっかけに、僕は彼の存在を認めることにした。
職員室を完全に敵に回したけれど、僕はその子の味方でいることを選んだ。
何度も家庭訪問をし、お母さんとも関係をつくった。
「お前、また家に行ったのか?」
そう話す彼だったけれど、その表情はあまり嫌がっている様子はなかった。
ある日のこと。
学級がモメていた。
合唱コンクールが間近に迫り、学級は二つに分かれていた。
大声で歌う男子。
きれいに歌いたい女子。
学級に嵐がやってきた。
男子の怒号と、女子の涙。
僕は無力だった。
そんな姿を見て、彼は言った。
「おい、俺が言ってやるわ」
「お前ら、やりたいことは一緒なんだろ。そこ、わかりあえよ!」
僕は笑ってしまった。
合唱なんて一度も参加したことがないくせに。
みんなが熱くなってる姿を見て、彼もまた熱くなっていた。
なんだ。
彼もまた、大事な大事なこのクラスの1ピースだったのだ。
教室に必要のない子なんていない。
彼は僕にそのことを教えてくれたのだと思う。
学校の意に反した行動を「問題行動」と呼ぶ。
それはいったい、だれにとっての問題だろう?
子どもとつながる問いかけの魔法
壁を作るから、壁は生まれる。