なぜ「勉強のできる子」は億万長者になれないのか

優秀であることが幸せであるとは限らない

成績優秀な子どもはどんな人生を送るのか

学校での学習成績が優秀な子どもは、どんな人生を送るのでしょうか?

一生懸命勉強すれば、いい人生が約束されているのでしょうか?

 

 

この問いを考えるうえで、興味深い研究があります。

今日は、それを見ていきましょう。

 

 

1980年代〜1990年代にイリノイ州の高校を首席で卒業した81人の「その後」を調査したのはボストンカレッジの研究者、カレン・アーノルドさん。

 

 

首席で卒業した彼らの95%が大学に進学しました。

大学での学習成績の平均は3.6。

 

3.5あれば『非常に優秀』と評価されるのだそうで、かなり優秀であることがわかります。

高校で優秀な成績だったのですから、大学でも成績が優秀なのは、不思議なことではありません。

 

 

その中でも60%の人は大学院に進学し、40%の人は弁護士や医師、エンジニアなど社会的評価の高い専門職に就いたのだそうです。

 

 

しかし、彼らの中に世界に変革をもたらしたり、人々に感銘を与えるようになった人は1人もいませんでした。

 

 

優等生たちは、多くの仕事で順調に業績を重ねます。

ですが、システム内に収まる人が多いようなのです。

 

 

アーノルドさんによれば、学校で優秀な成績を収める資質は、社会で大きな功績を残す資質とは相反するということなのです。

 

 

その理由を見ていきましょう。

 

 

学校で良い評価をされること

その理由の1つに「学校は言われたことをきちんとする能力が評価される場所だから」ということが挙げられます。

 

換言すれば、規則に従い、システムに順応していこうとする者が報われる場所です。

 

アーノルドさんのインタビューに答えた被験者たちも、「自分が一番勤勉だったけれど、一番賢い子は他にいた」と述べているのだそうです。

 

良い成績を取るには深く理解することよりも、教師が求める答えを出すことの方が大事なわけで、多くの人たちは「良い点数を取ることが自分の仕事」と考えていたそうなのです。

 

 

しかも、学校ではすべての科目で平均的に良い点数を取ることが求められます。

情熱や専門的な知識はあまり評価されません。

 

 

ここに大きなジレンマが存在します。

 

 

ひとたび社会に出ると特定のスキルが抜きに出ていることの方が評価されるようになるからです。

 

 

大きな成功を阻むのは、平均的であること

さて、アーノルドは1つの事実を発見します。

それは、「純粋に学ぶことが好き」な学生は、「学校で苦労する」という事実です。

 

 

自分が情熱を注ぎたい「ある分野」がはっきりしている子どもにとって、学校というシステムは息が詰まります。

恐竜が大好きな恐竜博士も、日本の歴史を学ばねばなりません。

韓流スターが大好きで韓国語を学びたい子も、英語を学ばねばなりません。

 

 

ただし、間違えていただきたくないことがあります。

僕は、「日本の教育」を批判したいわけではありません。

 

 

それぞれが好き勝手に学んでいては、40人もの子どもたちを1人の先生で見ることなど不可能です。

平均的であることを求められるのは、現行のシステムでは仕方のないことです。

 

 

これは「学校の問題」ではないのです。

親が子どもに対して、過度に「優秀な成績」を求めることへの戒めとして、読んでいただきたく、記事を書きました。

 

 

さてさて。

 

 

ハーバード大学のショーン・エイカーさんの研究では、大学での成績と、その後の人生の成功には、関係のないことが裏付けられています。

700人以上のアメリカの大富豪を調査したところ、その成績の平均は2.9程度だったということです。

この数字は、「中の上」程度なのだとか。

 

 

「成績が良いこと」を誇る必要もなければ、「成績が悪いこと」を卑下する必要もないのです。

 

 

これからの時代に子どもたちに身につけさたいこと

私たちは会社に雇われて働くことが、当たり前の時代に生まれました。

良い学校に入り、良い会社に就職すること。

それが成功モデルでした。

 

 

会社や職業に寿命があることを知らずに生きてきました。

経済は常に右肩上がりであると信じてきました。

 

 

ところが、時代のターンは変わりました。

 

 

人口は徐々に減少を始めています。

確実に超高齢社会がやってきます。

やがて、インフラを整備するための十分な税収入さえ厳しい時代が予想されます。

 

 

公務員ですら、「安定の職業」とは呼べない時代が来ます。 

多くの職業はその役割を終えます。

人工知能と機械化の波は、「与えられた課題を的確にこなすこと」に長けた人間から、どんどん仕事を奪っていくことでしょう。

 

 

だから。

 

 

これだけはお伝えしたい。

「学習成績」に対する過度の信仰は子どもたちを苦しめます。

そして、その先に幸せな人生が待っている可能性は極めて低いということを知っておいてください。

 

 

だから。

 

 

子供の興味や関心を大切にしてください。

とことんまで探求させてあげるのです。

 

 

また、体感することを通して、たくさんの学びを与えてください。

我が家は学習塾には行かせません。

そのお金で海外旅行に連れていきます。

 

 

彼らは語学の大切さを身をもって体感しています。

だから、語学への関心が高く、また関心が高いからこそ力は伸びていきます。

 

 

点数のために学ばせてはいけません。

褒められたいから学ぶようではいけません。

 

 

「もっと学びたい」を生み出しましょう。

 

純粋に学ぶことが好き。

 

こういう子どもの将来こそが明るいのですから。

 

 

【参考文献】

エリック・パーカー著『残酷すぎる成功法則』(飛鳥新書)

 

 

子育てに迷ったときに出会いたい100の言葉

優秀であることが、幸せであるとは限らない。


くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」としても活躍中。人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・互いの「ものの見方や感じ方の違い」を理解し合うことで、他者に寛容な社会を実現したいと願うようになり、2017年独立。

・独立後は、教員時代の経験を活かし、全国の幼稚園や保育園、学校などで保護者向け講演や教職員研修を行う。2018年・2019年には、100人のボランティアスタッフを束ね『子育て万博』を主催。今年10月にパリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week2021』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフ総勢150名のマネジメントを担当。

・2020年11月、「スタッフみんなが、明日も生き生きと来る!」を理念に、株式会社ミナクル組織研究所を設立。経営者、教職員、スポーツ指導者など、組織のトップや人を指導する立場の人たちから依頼を受け、人間関係づくりやチームづくりに関する講演や企業研修、教職員研修を行っている。経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムを開発中。