お母さんは超能力者?
お母さんになると脳が変化する
出産を終えた女性は記憶力や認知力が低下すると言われています。
果たして、それは本当でしょうか。
あるお母さんの脳をMRIで撮影しました。
これから第1子の出産を迎える前と、
出産3ヶ月後に撮影したのだそうです。
すると、驚くべきことがわかりました。
出産して母親になると、
脳の30箇所以上が肥大したのだそうです。
では肥大した場所は、
人間の能力のどんな部分に影響を与えたのでしょうか。
それらは、
「赤ちゃんの泣き声に敏感になる」
「育児に喜びを感じる」
「意思決定や行動力がアップする」
「気持ちを読み取る能力がアップする」
という影響を与える場所だったそうです。
さまざまな研究によって、
女性の脳は出産によって驚くべき変化をすることがわかっています。
「ある能力が低下する」という考え方は、出産にマイナスのイメージを植えつけます。
しかし、そうではないのです。
ある部分の能力が際立つようになる。
そう考えた方が適切だと僕は思います。
我が子の泣き声を当てられるか
長崎大学医学部で、「お母さんは我が子を泣き声だけで当てられるか」という実験が行われました。
生後3ヶ月の赤ちゃんとその母親が集められ、カーテン越しに泣く赤ちゃんの声を聞いて、どの子が自分の赤ちゃんかを当てるという実験です。
この実験、最初はうまくいかなかったんだそうです。
赤ちゃんが変わるたび、「この子がうちの子かも…」と不安になりコロコロとお母さんたちは意見を変えていったんだそうです。
同じ赤ちゃんを「自分の子」と認識し、実験は失敗か…と思われました。
ところが、すべての赤ちゃんの泣き声を聞き終えると、10人のお母さんたちは全員別々の赤ちゃんを選び、なんと全ての母子が一致していたのです。
お母さんたちはこう答えます。
「すべての赤ちゃんの泣き声が自分の子のように感じた。でも、自分の赤ちゃんだけは胸が締めつけられるような気持ちになった」と言うのです。
このようなことは、なぜ起こるのでしょうか。
なぜ、お母さんは我が子の泣き声を聞き分けられるのか
その答えもまた、脳の研究が教えてくれます。
なんと自分の赤ちゃんの泣き声を聞いたときと、他人の赤ちゃんの泣き声を聞いたときでは、脳の反応する部分が異なることがわかっています。
それは愛おしさや愛着を司る部分です。
実験でお母さんたちが感じた「胸を締めつけられるような感じ」は、脳が反応して起きた現象だったのです。
「どの泣き声が自分の赤ちゃんだろう?」と考えていたとき、お母さんたちは自分の子どもの泣き声を聞き分けることはできませんでした。
頭で考えたからです。
しかし、自分の内側にある気持ちとつながったとき、胸の奥のシグナルが「この泣き声が私の子だよ」と教えてくれたのです。
これは何もスピリチュアルな話ではありません。
脳科学のお話なのです。
泣き声というものは、赤ちゃんが唯一お母さんに発することのできるサインです。
そうやって、身に迫る危険を知らせるのですね。
赤ちゃんが泣くことはシグナルです。
そして、シグナルを敏感にキャッチできる能力が、出産によって開花するのです。
私たち人間も、動物の1種に過ぎません。
そして、産み育てるという過程で起こる変化は、動物の営みの一編であるようにも感じます。
子どもとつながる魔法の質問
出産でどんな変化がありましたか?
【参考文献】
NHKスペシャル取材班
『ママたちが非常事態!?』
(ポプラ社)