あなたは賛成?それとも反対?部活動を学校の先生が指導することについて


「好きを仕事にする」

が流行っている。

 

 

いや、むしろ、「好きを仕事にしなきゃダメ」的な鎖に縛られている人は多い。

SNS上では、B to Cの講師業をしたい人にコンテンツを提供する協会ビジネスが頻繁にアップされる。

 

 

趣味を仕事にすることは素晴らしいことで、会社に勤めることは時代に合わないかのような錯覚を覚える。

 

 

最近、ツイッターを眺めているんだけど、働き方についての文句が多い。

僕からすると、

「えっ?それって初期設定じゃん?」

と思うのだけれど、

「ブラックだ!ブラックだ!」

と、やたらうるさい。

 

 

この国は「職業選択の自由」を認められている。

知らない人もいるのかもしれないが、士農工商の時代はかなり昔に終わっている。

 

 

何を仕事にしてもいいし、どう生きたっていい。

職業を選べる時代って、本当にありがたい。

 

 

僕の父親はバスの運転手だった。

これが江戸時代だったら、僕には「バスの運転手」という仕事を選択するしかなかったわけだ。

 

 

そんな僕が「学校の先生」という仕事を選ぶことができた。

なんてありがたい時代だろうと思う。

 

 

さらに、思う。

この国は年功序列が当たり前だった。

経済は右肩上がりだったから、勤続年数が長いほど給料は上がり、退職金も高くなる。

 

 

したがって、同じ会社で働き続けることが正解だった。

就職したら定年退職まで働くのが当たり前だと思われてきた。

 

 

そうなると、就職するときにできるだけ優良企業に入ることが望ましくなる。

就職を少しでも有利に進めるため、少しでも評判の良い大学に進もうとなる。

 

 

 

偏差値の高い学校や就職に有利な資格を取得できる学校に人が集まるようになる。

学習塾がどんどん増え、「遊びが仕事」と言える幼い頃からカツカツ勉強させられるようになる。

 

 

もう、地獄みたいな時代だった。

 

 

ところが、昨今はどうだろう?

いつ企業は倒産するかわからないし、リストラされることだってある。

時代の変化が早すぎて、「安定した職業」なんて存在しない時代だ。

 

 

これから日本の人口はどんどん減っていく。

減っていく中で、高齢者が増える一歩なので、若者世代が極端に減っていく時代なのだ。 

 

 

当然、給料が右肩あがりに伸びていくなんてことはないから、転職や独立起業してキャリアアップしていく必要がある。

 

 

これまでの時代は同じ池の中で大きく成長していけば、それで安泰だった。

これからの時代は成長するたびに、池を変えていく必要が出てきたわけだ。

となると、新しい池でも早く水に馴染めるサバイバルな能力の方が重宝されるようになった。

 

 

できるだけ見栄えの良い学歴を身につけ、それなりのサイズの池を選ぶところが勝負の時代から、成長しやすい池を見つけてそこで成長したら次の池を目指し、いずれは湖、そして大海へ飛び出すのが良いわけだ。

 

 

つまり、こうなる。

士農工商の時代には、職業選択ができなかった。

昭和から平成にかけては、一つの職業しか選べなかった。

そして、令和時代はたくさんの職業を選べるようになった。

 

 

仕事はコロコロ変えても良い。

これって素晴らしいことだ。

 

 

(就職したけど、なんか違うんだよね?)

 

 

そう感じても、石の上にも3年。

かじりついてるうちに、なんとなく定年を迎えていた時代があった。

 

 

今や、「なんか違う」なら、違わない「何か」を探した方がトータルで見てハイリターンな時代になったのだ。

まあ、そうやってコロコロ職業を変えているうちに、結局「何者でもない自分」になってしまう者もいるわけで、こればかりは難しい。

 

 

まず、自分のサイズに池が合わなくなったら、湖に移籍することを考えよう。

僕の場合、「学校の先生」というサイズが僕に合わなくなったので、独立した。

 

 

何度も何度も伝えているけれど、「学校の先生」という仕事が大好きだった。

今でもその気持ちは変わらないし、イチ担任として教育現場に戻れるなら、今も戻りたい気持ちでいる。(学年主任とか進路指導主事とかはやりたくない)

 

 

だから、「学校の先生」が「ブラックだ〜、ブラックだ〜」と思うなら、他にも職業はいっぱいあるし、何を選んでも自由なのになぁ…と僕は思う。

 

 

こんな話をすると、

「でも、私は子どもが好きなんです。授業が好きなんです」

とおっしゃる先生もいる。

 

 

(えっ?じゃあ、学習塾や家庭教師の先生でもいいじゃん?)と思ってしまう。

まあ、でも、そこは「公務員」という名の安定と、バリューは下がったとはいえ「学校の先生」という肩書きは捨てたもんじゃないわけで。

 

 

それに給料だって悪くない。

お金って恐ろしいもので、

「お金があったら起業するのに」

という話をもう幾度も聞いた。

 

 

それなりに退職金があるわけで、それを軍資金にすればいくらでも起業などできる。

それに、お金があるぐらいで起業がうまくいくなら、世の中に倒産する会社も閉店する店舗もない。

 

 

問題は資金ではないんだけどね。

「お金」って、やらない言い訳に使いやすい。

 

 

したがって、

「学校はブラックだ〜!ブラックだ〜!」

「働き方改革だ〜!働き方改革だ〜!」

と訴えつつ、普通に働くことを選ぶ人が多いのも事実である。

 

 

反対に、

「私もくればやし先生みたいに、セミナー講師をしたり、個人セッションで人の相談に乗ったりしたいです」

とも言われる。

 

 

教えたり、相談に乗ることが好きらしい。

それさ、「学校の先生」じゃん!

 

 

独立したら、最初にぶち当たる壁は集客である。

セミナーの中身をよくしても、個人セッションの質を上げても、人が集まらなければ意味がないわけで、開店休業状態が続くことになる。 

一見華やかに見えるコーチ業やセラピスト業も、実態は閑古鳥が鳴きまくっている。

 

 

その点、学校という場所は「集客」の心配がない。

各教室は常に満員御礼である。

 

 

個人面談では、15分刻みで個人セッションができるし、文化祭や体育大会などのビッグイベントは常に満員御礼である。

 

 

そのうえ、備品も使いたい放題。

個人事業主は、これらをすべて自分で用意しなければならない。

 

 

いや、マジで「学校の先生」って悪い仕事じゃないと思う。

教えることが好きで、人の相談に乗ることが好きなら、決して悪い仕事じゃない。

 

 

「ブラックだ、ブラックだ」って言うけれど、独立したらさ、朝目が覚めてから夜寝るまで、ずっと働き続けることになる。

好きなことしかしていないけれど、休みなんてものはない。

それに収入だって安定していない。

 

 

「好きを仕事にする」という鎖のせいで、「従業員として働くこと」が、なんだか

「人生の半分、損してるよ?」

みたいに聞こえてしまうことがある。

 

 

ぶっちゃけ「好き」なんて仕事にしなくてもいい。

それよりも「嫌い」を仕事にしないようにした方がいいと思う。

 

 

授業の始まりのチャイムが鳴るたび、ため息をついて職員室を出ていく先生がいる。

「やめちまえばいいのに」と思う。

 

 

授業が嫌いな先生を見ると、ゾワゾワする。

野球が嫌いな野球選手、髪に触れたくない美容師、魚が嫌いな寿司職人なんていないわけで。

「だったら、やめちまえよ」と思う。

 

 

あと、子どもの話をちゃんと聞けない先生。

子どもが相談に来ると、面倒臭そうに対応するやつな。

 

 

「だったら、やめちまえよ」と思う。

野球が嫌いな野球選手、髪に触れたくない美容師、魚が嫌いな寿司職人なんていないわけで。

あー、この話、さっきしたか。

 

 

昨今、部活動の賛否が話題になっている。

ツイッターを見ていると、部活動を否定する声が割と大きい。

まあ、気持ちはわからなくもない。

 

 

でも、まあ、好きで部活動をやってる先生も多い。

たぶん、子どもと過ごすことが本当に好きなんだろうなって思う。

 

 

初任の学校で、サッカー部・吹奏楽部・野外活動部という3部を掛け持ちしたことがある。

その年は夜間中学の講師をしたり、組合の青年部長をしたりと、超多忙だった。

超多忙ではあったけれど、子どもたちが笑顔でいてくれるなら、それでよかった。

 

 

だって、「学校の先生」という仕事が好きだったし、子どもたちに関わることが好きだったから。

 

 

部活動に否定的な先生もいるし、「やりたい!」って先生もいる。

賛否あるんだけどさ、ぶっちゃけ僕はどっちでもいい。

 

 

ただ、いつも思うんだよね。

 

 

部活動って、初期設定だったじゃん?

就職試験を受ける前から知ってたじゃん?

 

 

だいたい勤務時間より前に子どもたちは登校するし、勤務時間が終わっても子どもはいるじゃん?

確かにそれはおかしなことではあるんだけど、一方でそんなことは初期設定の段階で知ってたわけ。

 

 

郵便局に就職したら、「えっ?俺、カブとか乗りたくないっす。ハーレーで配達したいです」とか言われても困るわけでして。

 

 

で、「そんなのおかしい!」って発信する結果、

「じゃあ、先生になるの、やめときましょか?」

って若者が増えてしまったなら、(おいおい、それ違うんじゃね〜の?)と思ってしまう次第です。

 

 

そんなに嫌なら、仕事って選べるしね。

いや、マジで、選んでいいんだよ、本当に。

 

 

僕はそういう革命的な先生たちよりも、目の前の子どもたちを幸せにすることだけを願って必死にがんばっている先生のお役に立ちたいと思っております。

いやもう、youtubeやらツイッターで、「こんなのおかしい!」って発信してる時間があったら授業の準備に充てたいわ!って先生のお役に立ちたいよね。

 

 

まあ、そうやって外でバリバリ発信してる分、職場でも大活躍ならわかるんだけど。

あれだけのコンテンツ作ってて、職場でも活躍してたら、そりゃ神だな…って思う。

 

 

でも、それだけ神な先生なら、職場環境ぐらいガンガン変えられると思うけどね。

 

 

まー、確かにブラックな部分、ありますよ。

でも、その中でがんばってる先生、いっぱいいますよ。

「そういう先生いっぱいいますよ〜」って発信したいし、応援したい。

 

 

教育は未来を創るお仕事です。

そんな尊い仕事をしている先生が笑顔で過ごせる学校がいいよね、って思うなぁ。

 

くればやし ひろあき

・株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

・フォロワー10万人の教育系TikTokクリエイター「くれちゃん先生」として人間関係や教育についての動画を配信

・1978年、愛知県生まれ。16年間公立中学校の教員として3,000人以上の子どもたちを指導。名古屋市内で最も荒れた中学校で生徒指導の責任者を務め、その後、文部科学省から上海に派遣され、当時世界最大の日本人学校であった上海日本人学校の生徒指導部長を務める。

・2018年~2019年 100人のボランティアスタッフをマネジメントして『子育て万博』を主催。

・2021年~2024年 パリコレクションのキッズ部門を日本に誘致して開催された『Japan Kids Fashion Week』において、全体計画及びキッズモデル・ボランティアスタッフのマネジメントを担当。

・経済産業省の事業再構築事業として人材分析システムCrewDocks®︎を開発。企業研修など精力的に活動中。